第零義 僕の物語

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うっへぇ、気持ち悪い。 文章に書き起こして見れば良い事を言っているように思えるが、 レオンさんと言うフィルターを掛けると名言も迷言になってしまう。 やはり名言とは言う人も重要のようだ。 「正に幸せの連鎖、ですね。」 だが、普段からレオンさんとの付き合いが無いシルビアちゃんにはまともに聞こえたようだ。 納得し、感心したように一方的な享受の罪悪感を拭い去った。 「幸せの連鎖か………………それは良い表現だ。 負の連鎖じゃなくて、幸せの連鎖を繋いでくれたら世界はもっと良い方向に進んでくれるだろう。 だからシルビア、幸せになれよ。 お前がその連鎖の第一歩となるんだ。」 「繋げます、繋げてみせます。 いつか、いつの日か…………………必ず。」 シルビアちゃんの決意の告白を受け取ったレオンさんは、それ以上何も言わずタバコで口を塞いでしまった。 しかし、勢い良く煙を吐き出すその後ろ姿は何処か満足そうに見えた。 「サガさん、レオンハルトさん。 私を助けて頂き、本当にありがとうございました。 この御恩は一生忘れません。」 記憶に新しい帝国とメルフィス王国の国境。 剣や槍に鎧等、焼けずに残った武具防具が散乱する退廃的な情景。 少し前まで腐臭を放つ死体が転がっていたかと思うと良い気はしないが、 シルビアちゃんを引き取るため同盟諸国連合が寄越した部隊との合流地点がそこだった。 「応、元気でな。」 「重要な所は全部ギブソンさんとレオンさんに頼りきりだったからね、素直に御礼を受け取れないや。」 今回僕がした事で評価を得られそうな点は、シルビアちゃんを連れてあの街から脱出した事くらいだ。 一生記憶してもらえる程の恩では無いように思える。 「いいえ、レオンハルトさんも言っていたではないですか。 レオンハルトさんやギブソンさん、彼らとの繋がりもまたサガさんの実力の内であると。 それにあの日サガさんに助けて頂かなければ、 多分私は好きでも無く名前すら知らない人と結婚させられ道具として一生を終えたでしょう。 だから、私が一番感謝しているのは……………貴方ですよサガさん。」 では、と。 あれこれ語っていると別れが切り出し難くなるので会話を切り上げ、 シルビアちゃんは迎えの馬車に走って行った。 だが馬車の扉が閉められようとした時こちらを振り返り、大きく手を振りながら言った。
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