第零義 僕の物語

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人として、最低な行為を。 「サガ、さん………………………?」 「道を開けろ、この子の頭を吹っ飛ばされたく無いのなら。」 シルビアちゃんの側頭部に拳銃を突き付ける。 引き金に指を掛け、ほんの少し押し込めば弾が発射される状態にして。 「へ、へぇ………これは予想外かな。 まさか助けに来たお姫様を人質に取るなんてさ、何を考えてるんだい? ちょっと僕には分からないかな。」 少年は困惑気味に僕の真意を尋ね、僕達を静観していた観客にも動揺が走る。 それもそうだろう。 命懸けで助けに来たシルビアちゃんを、今度は僕が殺そうとしているのだから。 「道を開けろ。」 「いやいやいやいや、お兄さんはその子を助けに来た訳でしょ? ならその子じゃ人質として成立しないんじゃないかな?」 「するさ、シルビアちゃんは君達にとって昏き者を使役するのに重要な存在だ。 こんな所で脳味噌をぶち撒けて死なせたくは無いだろ?」 「それはそうだけどさ。 でも彼女を死なせたくないのは君だって同じのはずだ。」 焦っている。 今この場を支配している少年が。 畳み掛けるとしたら、今を逃してはならいない。 「当たり前だ、こんな可愛い娘の死を望むのは若さを目の敵にする行き遅れBBAだけだ。 救い出せるのなら、それが可能ならこの先一生会えないのだとしても僕は命を賭してシルビアちゃんを守る。 でも、助けられないのなら。 この命を張っても全然足りないのなら、僕は───僕がシルビアちゃんを殺す。 昏き者を使役するための道具として利用され、間接的に何万人もの人々を殺してしまう前に。 取り返しが付かない事態になる前に、僕が食い止める。 ……………………シルビアちゃんを犠牲にして。」 左腕でシルビアちゃんの首を抱き、暴れても抜けられないように力を込めて締め上げる。 首を締められたシルビアちゃんは苦しそうに顔を歪め、僕の腕を外そうと抵抗する。 だが、それは許さない。 抵抗するならそれ以上の力で押さえ付ける。 本気だと、その意思を示すために。 「だから退け!!!! 正直僕はもう精神的に限界なんだ、英雄が近付いただけで誤って引き金を引いてしまうかもしれない程にね。 この子を生かしたいなら、利用したいなら道を開けろ。」 心が痛い。 演技とは言え、シルビアちゃんに乱暴するのは。
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