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本気で言ってる。
この生まれついた殺人鬼のような狂人は、本当に帝国の国益よりも自分の欲望を叶えるつもりだ。
それも質の悪い事に、帝国の高官さえも様付けで呼び意見も許されない程の権力者。
誰も彼を止められない。
子供の我が儘が通るような問題ではないと分かっていても、止められない。
「お兄さん、焦らすのは無しだよ。
早く見せてよ──────僕が殺したくなっちゃうからさ。」
「────────────ッ!!!!」
手が震える。
引き金に掛けた人差し指が麻痺し、僕の制御から離れ勝手に力を加えていく。
止めろ。
何をしているんだ僕は。
あの狂人の望み通り引き金を引いてしまったら、本当にシルビアちゃんを殺してしまう。
演技だったはずなのに。
シルビアちゃんを助けるためのハッタリだったのに。
音速の鉛弾が放たれ、頭蓋骨を突き破り脳味噌を貫通し外へと出て行く。
即死だ。
助ける術なんて無い。
「─────────────」
狂人ユーグリウッドの期待に満ちた視線に耐えられず目を泳がすと、一瞬シルビアちゃんと目が合った。
すると。
何故かシルビアちゃんは。
仕方ないよね、と。
諦めたように、少し悲しく微笑んだ。
何だよ。
何だよそれ。
一言、ただ一言死にたくないと言ってくれれば。
或いは、涙を流して撃たないでと訴えてくれれば。
僕はきっと、シルビアちゃんを殺そうとする人差し指の呪われた魔力に打ち勝てた。
なのに。
それなのに。
そんな顔をされたら。
僕は。
もう。
撃つしか、無いじゃないか。
守ると、そう約束した君を。
「さあ!!!!」
引き金を引く指は止まらない。
覚悟したようにシルビアちゃんは抵抗を止め、目を閉じた。
「ごめん────────────」
引き金の抵抗が臨界点を超え、撃鉄が起きる。
弾かれたように、吸い込まれるように撃鉄は弾丸の雷菅を叩き発射される。
引き金を引いてから一瞬で雷菅を叩くはずの撃鉄が、何故か今は半ばで止まっているように見えた。
そう、ずっと。
瞬きをしても位置は変わらず。
変わらず。
撃鉄は、半透明な薄い膜によって止められていた。
「殺させねぇよ。
オレの………レオンハルト・スターダストの弟子に、大切な人を犠牲にするなんて言う選択肢は選ばせない。」
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