第零義 僕の物語

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昏き者の使役権を譲渡してもらうための形式的なものとは言えど、 弟子が師匠よりも先に結婚してしまうとは如何なものか。 レオンさんが結婚出来ないのは、自業自得な所が大きいと思うが。 「シルビア・ラヴクラフト、貴女はこの男性を健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も愛し合い敬いなぐさめ助けて変わることなく愛することを誓いますか?」 「ええ、誓います。」 ……………………これは恥ずかしい。 昏き者を根絶させるための儀式だと分かっているのに、 今の自分を客観的に見て改めて考えると恥ずかしくなって来た。 形式上ではなく、本当に結婚してしまいそうな雰囲気だ。 「あなた方は自分自身をお互いのために捧げますか?」 「さ、捧げます。」 「はい、捧げます。」 儀式だと割り切ってるシルビアちゃんは落ち着いたものなのに、 変に意識してキョドってしまうとは男として情けない。 童貞臭丸出しではないか。 「次は指輪交換なんだが……………オーダーメイドの上等品を用意してる暇は無かった。 来る途中に買った安物で我慢してくれ。」 僕とシルビアちゃんに銀色の指輪が投げられる。 安物とは言っても、最低限の体裁は保つ ために銀製のようだ。 「続けるぞ。 サガ・ニーベルヘルン、貴方はこの指輪をシルビア・ラヴクラフトに対する貴方の愛の印として彼女に与えますか?」 「あ、与えます。」 「ではシルビア・ラヴクラフト、貴女はこの指輪をサガ・ニーベルヘルンの貴女に対する愛の印として受け取りますか?」 「はい、受け取ります。」 「シルビア・ラヴクラフト、貴女はこの指輪をサガ・ニーベルヘルンに対する貴女の愛の印として彼に与えますか?」 「はい、与えます。」 「サガ・ニーベルヘルン、貴方はこの指輪をシルビア・ラヴクラフトの貴方に対する愛の印として受け取りますか?」 「ええ、受け取ります。」 「では指輪を交換して下さい。」 「えっと…………………………」 指輪交換ってどうやるんだろう? 特別な作法が必要なんだっけ? 僕がアワアワ挙動不審になっている間にも、シルビアちゃんは練習を積んだような優雅な動作でロンググローブを外していた。 このような場で女の子に恥をかかせるのは絶対に駄目だ。 なので視線でレオンさんに助けを求めるも、知らん振りを決め込まれてしまった。
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