第零義 僕の物語

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腰には機能性重視のレオンさんが嫌悪するような華美な装飾が施された短剣と、 ついこの間まで倉庫の片隅で埃を被っていたような古びた剣。 確かに2本の剣を提げているという特徴には合致しているけど、 本物のレオンさんが所持する《断魔》とラウドさんとは全くの別物だ。 そして何よりも、その異様な雰囲気を醸し出すのに貢献しているのは漆黒のフルフェイスのヘルメット。 ……………………うん、確かにあれは近寄りたくないね。 口の部分を改造して被ったままでも飲み食い出来るようにする面倒な手間を掛けるくらいならば、 普通にヘルメットを脱げば良いのに。 と言うより、酒場でフルフェイスのヘルメットを被ってるのはマナー的にどうなのだろうか。 その如何にもな不審者こそレオンハルト・スターダストだと教えられたエルフのお姉さんは、 豊満な胸をプルンプルン揺らして意気揚々と彼のテーブルの前に立った。 「失礼、貴殿がレオンハルト・スターダストか!?」 自信満々に。 そう尋ねて、期待通りの答えが返って来るのを待った。 まるで友人に相思相愛だと勇気付けられ告白に踏み切った少女のように。 残念ながら、それは叶わぬ恋なのだが。 『──────どうして、オレだと分かった?』 と、思ったのだが。 レオンハルト・スターダスト(偽)はどうやらノリの良い人だったらしい。 エルフのお姉さんの話に合わせて会話を進める。 「貴方がこの街にいると、婆様の占いに出たのだ。 婆様に聞いた特徴とも一致していたし…………その常人ならざる気迫が何より証明だと思った。」 気迫と言うか、不審者具合はヘルメットによるものだと思うけど………………… 『そう、か………………そこまで知られてるなら顔を隠す意味も無いか。』 レオンハルト・スターダスト(偽)にとって、素顔は何がなんでも見せたくないものではないらしい。 特に躊躇う素振りを見せず、寧ろ外すのに都合の良い理由が出来たと自らヘルメットを脱いだ。 さて、ヘルメットの下に隠された顔は如何なるものか。 ぶっちゃけレオンさん(真)よりも偽物の方がイケメンだったりするのがあの人の笑えない所なんだよね。 「──────────って、レオンさん?」 ヘルメットが取り払われ、遂に……と言う程でも無いが披露された素顔。 それは、何処からどう見てもレオンさん本人だった。
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