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「オイお前、何か言ったらどうだ?
目の前で自分の女が口説かれてるってのに澄ました顔で無視してんじゃねぇよ。
どうせビビってるんだろ?
ハッ、テメェの股間にぶら下がってる物は風鈴か?」
「臭ぇ。
豚が一丁前に人様に向かって喋りかける前に、その酔っ払いのゲロみたいな口臭をどうにかして来い。
折角の酒が不味くなる。」
人を苛立たせ怒りを買う天才のレオンさんらしい刺さるような毒舌。
元々入っていた酒も手伝い、レオンさんに絡んだ男は一瞬で顔を沸騰させテーブルに置いてあった酒瓶を掴み振り上げた。
それでもレオンさんは全く反応を見せないので、男の方も収まりが付かなくなり遂には酒瓶を振り下ろした。
「危──────────」
振り下ろされた酒瓶が頭直撃コースに入るその時だった。
ズン、と。
凄まじいまでの重力がのし掛かり、肺の中の酸素が強制的に追い出される。
鷲掴みにされた心臓を握り潰されたような、そんな衝撃。
「────────痛ッ………………………」
視界が暗転し、瞬きをする程度の時間だが意識が飛んだ。
幸い…………と言うべきか、僕は偶然壁に頭をぶつけたので直ぐに復活したが、
不幸にもそうでなか った酒場の人達はほぼ全員が机に伏すか床に倒れる羽目となった。
………………………何だったんだろう、今のは。
凍てつくような風が吹き抜けた後、何か巨大なものに睨まれたような気がした。
とてつもなく大きな、強大なものに。
「そんな離れた所にいたら話も出来ないだろ?
オレに何か用があったんじゃないのか?」
恐らく僕が意識を飛ばした瞬き程の時間の間に、エルフのお姉さんは咄嗟に反対側の壁まで飛び退いていた。
今ので意識を失わなかったのは流石の一言だが、体は震え唇は青紫に変わっていた。
動悸もかなり激しく打っているみたいで、息が荒い。
「な……………何者だ、貴方は?」
「お前、分かっててオレの所に来たんじゃないのか?
オレはてっきり"これ"目当てだと思ったんだがな、早とちりだったか。」
「貴方は…………………貴方は本当に人間か?」
それは僕も常々思っている。
レオンさんは本当に人間なのだろうか。
自称普通の人間だが、実は宇宙人に肉体を改造されて不死身の能力を得ていたという設定があったとしても僕は驚かない。
寧ろそう言う設定が無い方が驚きだ。
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