第零義 僕の物語

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しかし、この質問に対してレオンさんは決まってこう答える。 「オレは人間だよ。 何処にでもいる普通の人間だ。」 レオンさんみたいな人が何処にでもいるのなら、きっとこの世界は永遠に安泰だろう。 魔王が現れたとしても、きっとその日の内に討たれるという悪役に厳しい世の中になるはずだ。 「それとも何だ、お前にはオレが化け物にでも見えてんのか?」 「…………人間の皮を被って化けているだけという可能性もある。」 「さいですか……………………」 本気でその線を疑われ、少々深刻に落ち込むレオンさん。 ここら辺はやっぱりいつものレオンさんだ。 最初に感じた違和感も、きっと気のせいなのだろう。 「全く、何やってるんですかレオンさんは。 ここまでしなくても、幾らでもやりようは有ったでしょうに。 お店と他のお客さんに迷惑じゃないですか。」 そろそろ出ても良い頃合いだろう。 そう判断した僕は、僕だけに買い物をおしつけて一人でお酒を飲んでいた事と頭をぶつけた事に対して文句の一つでも言ってやるため店の中へ入った。 「君は、昼の……………………」 「その節はどうもすみませんでした。 僕はサガ・ニーベルヘルン、そこにいるレオンさんの弟子です。 あの人が貴女の探し人のレオンハルト・スターダストだと伝えるべきだったのですが、余計な事をするなと言わ……脅されまして。 こんな回りくどい事をするなら、あの場で素直に話を聞いておけば良かったのに。 恩人に手間をかけさせた師匠の無礼、代わってお詫び申し上げます。」 「いや、これは面と向かっていながら気付く事の出来なかった私の落ち度だ。 君の謝罪を受けるような事ではない。」 ちょっと抜けてるけど、本当に良い人(エルフ?)だ。 抜けてるけど。 いつも肝心な所で躓くのだろうと簡単に予想が出来るエルフのお姉さんは、立ち上がりレオンさんに頭を下げて言った。 「レオンハルト・スターダスト殿。 数々の苦難を乗り越えて来た貴方の力を見込み頼みたい事がある。」 多分ノーだろうな。 童貞のレオンさんには色仕掛けが面白いように通じるが、それだけでは流石に命を擲ってはくれない。 レオンさんに何かを頼みたいなら、仲良くなって好意を伝え(女性限定)涙をボロボロと流せば良い。 そうすればレオンさんは何でもやってくれる。 神の王や神話の化け物の討伐でも10万の大軍の殲滅でも何でもね。
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