第二義 被害者の会

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「こんちわーす、レオンハルト・スターダストさんにお届けでーす。」 「どうもーッス。」 某巨大ジャングルの名を冠する運送サービス会社のお急ぎクール便の受取書にペンを走らせ、昨日から待ちに待った商品を受け取る。 高級あんこう鍋セット(三人前) 一匹丸ごと切り分けたあんこうに濃縮出汁と味噌と各種野菜を揃え、 更には〆のうどんまで備えた全方位死角無しの最高級セット。 それもこれを一人で頂くという贅沢ぶりよ。 「おっこたに鍋の、最強コンボ~」 畳に炬燵(こたつ)と言う純和風の部屋。 炬燵はスッポリ全身入れる、ダメ人間歓喜の特大サイズ。 みかんは無料。 窓から見える庭園は趣があり、風情を感じさせる。 「久し振りの自由な時間、ダラけにダラけてやるぜ。」 先日何故かリリーが師匠の所で暫く学ぶと言い出し、妙に上機嫌な師匠は嫌な顔をせずに引き受けてくれた。 おかげで晴れてオレは自由の身。 誰にも邪魔される事の無い自分だけの時間。 そもそも最近忙し過ぎたのだ。 メルフィス王国で10万の帝国軍と闘って死にかけて、 《千盾》を救うために気色悪い魔獣の巣に乗り込んで。 更には茶番のために神獣序列22位《要塞亀カタパルトス》を瀕死に追い詰めて。 隙間の無いシフトが自慢の社畜も真っ青なブラックぶりである。 過労死しなかったのが驚きなくらいだ。 「さーて、あんこう鍋の時間だ!!!!」 勢い良く襖を開け放ち、部屋に上がろうとして。 「あら、遅かったわね。」 「わーい、鍋だ!」 「みかんみかん、っと。」 「お邪魔してます。」 この瞬間オレの手は音を置き去りにした。 襖をピシャッと閉め、ここが自分の部屋であるかどうかを確認する。 間違いない。 ここはオレの借りた部屋だ。 オレ以外誰もいるはずの無い部屋だ。 なのに、何故かとても見覚えのある女性が4人程いたような気がする。 名前は伏せるが、紅髪のロリ系少女とオレンジ髪の清楚系女子と腹黒系聖女と天使系女神が。 幻覚…………だろうか? 疲れているから有り得ない光景が見えてしまったのだろうか? もう一度、もう一度だけ開けて確認する。 「お兄―――――――――――――」 時空が歪んでいた。 ピンポイントにこの部屋だけ時間と空間が時空融合的な感じになっていた。
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