第零義 僕の物語

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美味しいバゲットサンドが食べたい。 思えば、これが今回の騒動の発端だった。 僕がそれを望んだ結果、巻き込まれてしまったのだ。 だからこれは僕、サガ・ニーベルヘルンを主人公とした物語。 僕が体験して、僕が解決した物語である。 「────────という訳で、あくまでバゲットサンドの主役はバゲットなんです。」 「成る程、確かに中身の具の旨さを求めるのならサンドイッチで良いもんな。 バゲットサンドに於いて、具はあくまでバゲット自体の旨さを強調するための引き立て役…………って言う事か。」 「理解してもらえて嬉しいです。 これに関しては説明しても中々分かってもらえなくて。」 サンドイッチもバゲットサンドも、外側は主役の具を挟むための脇役だと思っているナンセンスな人が世の中には多過ぎる。 サンドイッチの主役は、中身の具だ。 これは当然だろう。 具を挟むための味気の無い外側のパンは、無くてはならない物だけれど主役は務まらない。 紅茶風味だったり健康志向でカボチャが練り込んであったりしても、 主役は当然ヒロインにすらなれないだろう。 精々主役の親友ポジション止まりだ。 しかし、バゲットサンドは違う。 味も香りも自己主張を控える事が望まれるサンドイッチの柔らかいパンとは違って、 バゲットには程好い塩味に小麦の香ばしい風味に加えてドッシリとした歯応えがあるのだ。 単体でも美味しいバゲット。 このバゲットの美味しさを引き立てるのが中身の具の役目なのだ。 「お前が珍しく要求するから、こうしてこの街で評判のバゲットを購入した訳だが……………具の方はどうする? やっぱり定番のハムチーズとかツナか?」 「ハムチーズは、確かに定番の組み合わせです。 でもほら、やっぱりバゲットって固いしボリュームあるし唾液が多い人じゃないと水無しには完食出来ないんですよ。 だから水気を与える物として、ハムとチーズの他に瑞々しい野菜を入れたいんですよね。 例えばレタスとか。 パンや肉には出せないサッパリとした味を出すためにも。 あと、ツナは多分バゲットサンドには合いません。」 「何でだ? サンドイッチでは定番中の定番じゃないか。」 「ええ、ツナは味気の無いパンには良く合います。 ですが、元々程好く塩味のあるバケットとは喧嘩してしまいます。 寧ろツナの方が塩味は強いので、バゲット自体の味が殺されてしまいます。」
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