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「─────サガ、起きてるんだろ?」
「あー、やっぱり気付かれてましたか。」
いつ出て行こうか、どう自然体を装って話し掛けようか悩んでいた矢先だ。
僕が狸寝入りしているのを見破ったレオンさんは、一旦プーさんとの会話を中断しこちらに話を振って来た。
「自然な寝息から圧し殺した息に変われば、そりゃ気付く。」
「そんな細かい変化に気付くのはレオンさんくらいだと思いますけどね。」
悲しいかな、それはきっと不幸の女神様に愛されたレオンさんの哀しき性。
神経過敏くらいじゃないと生きていけないのだろう。
「聞いての通りだ。
オレは直ぐにここを発つ。
いつ帰って来れるのかは分からない、後の事は頼んだ。」
「後の事は………って、あの女の子はどうするんですか!?」
「悪い、その件に関しては今は構ってられない。」
「これは何の確証も裏打ちも無い僕の勘ですけど、多分あの女の子の事情はかなり厄介で急を要するものですよ?
何とかならないんですか!?」
「オレにとって今優先順位が高いのはこっちだ。
《千盾》の安否は今後のオレの活動に大きく関わって来るからな。
オレの体は1つしかないんだ、なら優先順位の高い方を取るのが当たり前だろ。」
「優先順位って……そんなの──────」
酷いですよと、言いかけて。
自分の中でも疑問に思ってそれを躊躇った。
酷い?
何が酷いんだろう?
感情抜きに冷静に考えてみれば、レオンさんの言っている事は何処もおかしくない当然の事だ。
今救うべきものが2つあって、レオンさんはより重要な方を救うと決めた。
当たり前じゃないか。
レオンさんは一人しかいないんだから。
レオンさんが一人で救えるのは1つだけだ。
それなのに、何で僕は酷いなんて言葉が真っ先に思い浮かんだのだろうか。
それは決まってる。
感情では、僕はレオンさんならば全て救えると勝手に期待を押し付けているからだ。
レオンさんは、大切なものを救うためならばそうでないものを切り捨てる超現実的な人なのに。
「そんなの………何だ?」
「い、いえ…………何でもありません。」
「そうか、なら良い。」
だけど、現実問題女の子はどうなる?
一方を救うために切り捨てられた方はどうなる?
受け入れるしかない………のだろうか。
来るタイミングさえ違えば、救われたはずなのに。
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