第零義 僕の物語

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「……………………………………昏き者。」 「まーたまたヤバそうな臭いがする名前が出て来たねぇ。」 昏き者、ね。 一体どんな化け物なのかな。 神獣とか、黄金の一族とか、神話の悪魔とかの類。 遂に僕も化け物デビューかと思うと…………正直逃げたい。 「私は……私達は────────」 遥か昔、シルビアちゃんの先祖は昏き者と呼ばれる深海の怪物と契約を交わしたらしい。 その契約によりシルビアちゃんの家に生まれた第一子(何故か必ず女性)は昏き者を使役する権利を得、 婚姻の儀を執り行う事でその伴侶である男性に権利を譲渡出来る。 数十年前、それに目を付けたのがある弱小組織。 昏き者の事を隠して普通の男性と共に生きていたシルビアちゃんのお婆ちゃんを誘拐し、 お爺ちゃんを殺して無理矢理婚姻の儀を行い権利を奪った。 そして子供を生ませ、また権利を奪ってから子供を…………つまりはシルビアちゃんを生ませた。 しかし、死ぬまで道具として使われる人生に絶望したシルビアちゃんのお母さんが自殺。 元の権利譲渡者が死んだ事によって組織は昏き者の使役権を失い、 これでは組織に莫大な利益をもたらす収入源が無くなってしまうのでまだ14歳のシルビアちゃんは強制的に結婚させられそうになった。 だがシルビアちゃんのお母さんが自殺する直前に昏き者の助けを借りて、何とかシルビアちゃんだけは逃した。 これが事の経緯。 シルビアちゃんの抱えた事情。 「どうするかなぁ…………………………………」 シルビアちゃんの話を聞いて、先ず出て来た感想がそれだった。 敵は14歳のシルビアちゃんとの結婚が狙い。 ………………文面にすると凄い性犯罪臭がするね。 「シルビアちゃん、その昏き者を使って組織を滅ぼしたりとかは……………出来ないかな?」 「すいません……………昏き者を使役するには決められた手順を踏まなければならないようでして。 私はまだそのやり方を教わってないんです。 お母さんも………何度も権利行使の媒介として使われて、それで覚えた感覚を元に私を逃がしてくれて…………………………」 「そりゃそうだよねー。 反旗を翻すかもしれないのに、教える訳無いか。」 元々それには期待してなかったけど、そうすると僕はどうするべきなのか。 この問題を、どう解決するべきか。
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