第零義 僕の物語

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詰めが甘いね。 レオンさんのように異常に顔が広い人で無い限り、世界に500人程度しかいない英雄はそう簡単に用意は出来ないだろう。 しかし最近やっと素人の座を脱ぎ捨てられた僕の奇襲くらい欠伸混じりに余裕で防げる人ならば、それなりにいるはずだ。 「信じられないだろうけどさ、レオンさんの知り合いは皆化け物染みた人達ばっかりなんだよね。 ま、今回は運が悪かったと思って大人しく寝ておくんだね。」 伸縮性のロッドを振って伸ばし、それを脳天に叩き付けて偽者の協力者を気絶させた。 このまま放置してたら命に関わるけど、多分今の銃声を聞き付けて誰かやって来るだろう。 ………………十中八九、僕らにとって敵だけど。 「シルビアちゃん!!!」 「は、はい!!」 まさか、敵が今の一人だけという事は無いはずだ。 階下、或いは外にも何人か待機しているのだろう。 一刻も早く逃げなければ。 レオンさんが派遣してくれる協力者を待っている暇は無い。 「まだ調子悪いだろうけど、窓から逃げるよ!!!!」 一応こうなる事も予見して、屋根に上がるための梯子を用意しておいて良かった。 シルビアちゃんを先に行かせ、僕も纏めてあった荷物を持って後に続く。 「チッ、あんな所に!!! 追え、絶対に逃がすんじゃねぇぞ!!!」 僕の読み通り、やはり外にはシルビアちゃんを連れ戻しに来た組織の者達がいた。 レオンさんとの会話が盗み聞きされ、あんな連中が白昼堂々大勢で好き勝手やれている辺り、 この街は組織の支配下にあるのだろう。 「待ちやがれクソガキ!!!」 「落ちろバーカ!!!」 考え無しに立て掛けていた梯子を使って屋根に上がって来ようとして来たので、梯子の固定を外し蹴って落とす。 途中まで上っていた男達は、梯子と供に下へ落ちて行った。 これで屋根に上って来る手段は失われたが、いつまでもこんな所で籠城していられるものではない。 「符術【結界】」 シルビアちゃんでも渡れるように、設置型の結界で屋根と屋根の橋渡しをする。 半透明な足場に一瞬躊躇ったが、シルビアちゃんは意を決して踏み出した。 「何処まで逃げるんですか!!?」 「竜馬を繋いである馬小屋まで。 それで何とか逃げ切れるはずだから。」 街に隠れ潜み、レオンさんが手配してくれる人が来るまで待つのも一つの手ではある。
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