第零義 僕の物語

27/118

30226人が本棚に入れています
本棚に追加
/786ページ
拳銃と言う遠距離武器を持っている分間合い的には僕の方が有利だが、如何せん拳銃は音が大き過ぎる。 僕達はここにいるのだと、わざわざ教えてあげるようなものだ。 それでも竜馬の足ならば逃げ切れるだろうけど、万が一という事もある。 ここは冷静に、状況を見極めるべきだ。 「…………………ねぇオジサン達、僕達急いでるからそこ退いてくれないかな?」 「吐かせ、小僧が。 お前の後ろにいるそいつの母親が自殺したせいで、オレ達は今ヤバい状況なんだよ。 今なら見逃してやるからさっさとそいつを引き渡せ。」 「嫌だね、って言ったら?」 「餓鬼じゃ使い切れないくらいの小遣い れてやるから、それ貰って失せろ。」 「残念、交渉決裂だ。」 僕が言い切るのを待たず、5人の中でリーダー格らしい男が一気に距離を詰めて来た。 決断の速さに躊躇いの無さ、動きの鋭さは一部レオンさんに共通するものがあった。 上体を低く沈ませ、地面を滑るような突進。 5人全員に注意を分散していたため、反応が遅れた。 まるで漫画の一コマを切り抜いて前後を繋ぎ合わせたかのように、いつの間にか男はあと一歩でナイフを刺せる所まで来ていた。 「符術【結界】」 反射的に身を引き腰のホルダーから拳銃を抜こうとしたが、その寸前にまだ慣れぬ符術に切り替える。 結界の展開はギリギリの所で間に合い、ナイフに体重を乗せていた男は返って来た衝撃で仰け反った。 男が体勢を立て直す前に拳銃で太股を撃ち、後続の男達には【爆雷符】の術符をプレゼントする。 「符術【爆雷符】」 ただの紙切れが爆発するとは夢にも思っていなかったであろう男達は面白いように爆発に巻き込まれ、 揃って地面に投げ飛ばされ僕達に道を開けてくれた。 符術と拳銃頼りとは言えほぼ一瞬で5人も倒した結果に酔っている暇も無い。 今の銃声と爆発音が聞かれ、こちらへ大勢の人間の足音が近付いて来ている。 出来ればこの状況は避けたかったが、こうなってしまった以上仕方ない。 「シルビアちゃん、乗って!!!」 竜馬に鞍を付けて飛び乗り、シルビアちゃんを引っ張り上げる。 シルビアちゃんにしっかりと掴まっているように伝え、手綱を握り進ませる。 竜馬は出だしから矢のように駆け、僕達は間一髪ながらもこの街からの脱出に成功した。
/786ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30226人が本棚に入れています
本棚に追加