第零義 僕の物語

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兎に角逃げる。 取り敢えず逃げる。 普通の馬の足では追い付けないように、出来るだけ街から離れる。 「あの、サガさん………………これからどうするんですか?」 シルビアちゃんを追う組織の手が何処まで回っているのか分からないので、 村や街等の人里は避け比較的安全そうな森の一角を今夜の寝床に選んだ。 貴重な暖である火を絶やさないように、拾って来た枯れ枝を焚き火に放り込む。 「どう、しようかなぁ…………………」 どうするかと聞かれても、僕にだって分からない。 これから先どうすれば良いのか。 僕が成すべき事は………………… 「結局バゲットサンド食べ損ねたなぁ………………」 「え?」 「ゴメン、今の無し。 ちょっと待ってね、こんな時こそ弱者に厳しい無情な世界を生き抜くためのレオンハルトマル秘マニュアルの出番だから。」 レオンさんがくれた弱者に厳しい…………面倒だからマニュアルは、 自分の実体験を基に書かれているので無情な世界を生き抜くのに本当に役に立つ。 神獣の呪いで6年間も死神に首を狙い追い回された経験は伊達じゃないね。 「えっと、相手が巨大な組織で頼れる人が一緒にいない場合は…………………………」 諦めて死ね。 「………………あぁ、うん、これは孤立無援の場合か。 援軍が望める場合は…………………………」 多分何らかのトラブルで来れなくなるから一人で頑張れ。 詳しくは孤立無援の場合の項目を参照。 「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 何だよこのマニュアルは!!!? まるで本物のレオンさんと喋ってるみたいじゃないか!!!!」 堪らず、マニュアルを焚き火に投げ入れようとした。 それを寸前で止められたのは、今まで何度も助けられた実績があったからだ。 「サガさん、その後もまだ続きがあるようですが………………………」 「え?」 確かに、見るとまだ続きがあった。 時間を稼がなければならない場合は、敵組織の足元へ行け。 「敵組織の足元……………拠点、って事かな? 何でそんな自殺行為を……………いや、灯台もと暗しか。」 その後には、敵組織の拠点に潜伏するための注意点と方法が記されていた。 やっぱりこのマニュアルは凄い。 時々書いてる人の性格が出て苛つくけど、指示は的確だ。
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