第零義 僕の物語

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刃物を見せればビビると思ってる街のチンピラなんかとは次元が違う。 死と隣り合わせなのが日常で、数多くの戦闘経験を積んだ強者。 …………………そう、丁度レオンさんのような。 「誰─────────ッ!!!?」 殺気を放って自分の存在を知らせた辺り、そもそも姿を隠したままでいるつもりは無かったのだろう。 高く積み上げられた樽の影から現れる。 デカイ。 街の明かりは港までは届かず、ランプも持って来ていないので月明かりだけが頼り。 なので顔の造りまでは見えないけど、シルエットならば分かる。 デカイ、兎に角デカイ。 恐らく身長は2m超。 それも筋骨隆々、鎧も着込んでいるので更に大きく見える。 「話し合いで解決……………は無理そうな雰囲気だね。」 敵わない。 直感する。 相手の経験値は自分より遥かに上。 更に絶望的な事に、自分の背丈程の大剣を片手で軽々と持ち上げているのを見るとどうやら英雄らしい。 英雄。 外見こそ普通の人間と同じだが、中身は全くの別物。 圧倒的な身体能力に加え、世界に愛された幸運。 産まれて来た時点で既に追い付く事の叶わない差が離れていると言うのに、 そんな化け物が数々の戦闘で経験を積み技を磨いているのだからもうどうしようも無い。 「───────────ッ、」 半歩、足を引いた。 膝が沈み、体が前に傾く。 ────────来る、と。 そう予感した瞬間、視界から敵の姿が消えた。 同時に、腰だめに構えていた銃を真正面に向かって発砲。 「痛ッ──────────」 鎧に守られているとは言え、音速の銃弾に当たって痛いで済むのは流石は英雄と言った所か。 しかし、止まった。 銃弾に体を撃たれ、足を止めた。 これならば、僕にも見える。 「符術【爆雷符】」 術符を投げ付け、起爆させる。 爆発は顔付近で起きたが、大したダメージは通らないだろう。 だから、これはただの目眩まし。 敵が僕を見失ったこの一瞬の隙に横へ回り込み、弾丸を叩き込みつつ左手でナイフを抜く。 このナイフには、毒や薬物に対する耐性が高い英雄をも黙らせる猛毒が仕込まれている。 これで露出している肌に少しでも傷を付ける事が出来れば、動きを止められる。 英雄相手に鬼ごっこを挑んでも、絶対に勝てない。
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