第零義 僕の物語

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「一応追手を警戒して、迂回路を使いつつ痕跡を消したつもりなんですけど…………やっぱり分かりますか。」 「ま、そこら辺はまだまだ修行不足で今後に期待だな。 下手に素人が痕跡を消そうとすると、逆に不自然さが目立って見付け易くなるんだよ。 自然なやり方はお前の師匠に今度教えてもらえ。」 さて、と。 ギブソンさんは大剣を背中に戻し、街へ戻る道を行く。 「取り敢えずお前達が今使ってる宿に戻ろうか。 お互いに仕入れた情報の整理と、明日からの行動方針と計画を立てたい。」 「────────成る程な、嬢ちゃんが昏き者を制御するための契約者だったのか。 道理で幹部連中から末端の下っ端まで必死こいて探し回っている訳だ。 クラークの運営費はほぼ全て昏き者を利用して賄われてるらしいから、奴らにとっては死活問題か。」 ギブソンさんを連れて港から戻った後。 僕が部屋を抜け出して直ぐに起きて帰りを待ってくれていたシルビアちゃんを交え、 今僕達が置かれている状況の説明と掴んでいる情報の交換を行った。 レオンさんとギブソンさんだけがそうなのか、それともハンターと言う人種に共通する性質なのか。 話の途中に何度も腰を折られ、細かい所を執拗な程に突っ込まれた。 特に僕の憶測で補完された情報徹底的に補完部分を排除され、仕入れ時の丸裸の状態にまで削ぎ落とされた。 「なぁ嬢ちゃん、昏き者を操れないってのは確かなのか? 細かい指示までは出せないにしても、大雑把な命令くらいは受け付けてくれるんじゃないか?」 「ごめんなさい、サガさんにも言われて強く念じてみたのですが………………何も効果はありませんでした。」 「昏き者を使役するには決められた手順を踏まなければならない、か。 だけどよ、嬢ちゃんのお母さんは何度も媒介として使われた感覚を基に昏き者を動かせたんだろ? となると、その手順とやらは完全に一致する必要は無いと見て良いな。 そして契約者が強く念じても反応無し。 これらを総合すると……………………言葉か。」 「言葉?」 「精霊って、知ってるよな?」 「ええ、契約すると魔法が使えるようになる異相世界の存在ですよね?」 「あぁ、その認識で正しい。 オレ達人間が喋る言葉と、精霊が扱う言葉は異なる。 だが稀に、精霊の言葉を理解出来る人間がいる。」
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