第零義 僕の物語

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「その精霊の言葉を理解出来るのが、魔法を使える才能のある人…………ですか?」 「一応他の条件もあるらしいが、一番はそれだな。 精霊の言葉を理解出来ない者が……扱えない者がどれだけ喚いた所で、自分の意思や考えは伝わらない。 あちらからすれば、訳の分からない言葉で捲し立てられてるのと同じさ。 基本的に人間の常識や感性ってのは精霊とかには通用しないし理解してもらえないからな。」 「昏き者もそれと同じ………ですか?」 「オレの経験上そんな所だ。 昏き者を使役するには、奴らの言葉が必要。 その言葉………一言か文章かは知らないが、それさえ分かればこっちのもんだ。 クラークの頭………つまりシルビアちゃんのパパさんか、そいつを締め上げて吐かせれば良い。 直接聞けば、契約者のシルビアちゃんなら即昏き者を操れるようになるさ。」 「それで………昏き者を操って、どうするんですか?」 「この街を襲わせれば良いだろ。 どうせこの街は国際級の犯罪者ばかりが集まった無法者の楽園なんだ。 殺しても寧ろ感謝されるくらいさ。」 「……………………………………」 やっぱりだ。 確かに、合理的。 昏き者をインスマスに揚げて暴れさせ、クラークを壊滅させればシルビアちゃんは解放される。 だけど、それは…………………… 「………………シルビアちゃんに、人殺しをさせるんですか?」 レオンさんも、ギブソンさんも。 人を殺す事に微塵の抵抗も無い。 必要であれば、呼吸するのと同じくらい当然にやる。 そして、数時間後には普通に馬鹿話で笑ってる。 異常だ、普通じゃないんだ。 この人達の感覚は。 ギブソンさんは少しの間言っている意味が分からないと首を傾げていたが、 忘れていたのを思い出したように代替案を提案した。 「じゃあサガ、お前がやれ。 結婚って形でその伴侶も昏き者を使役する権利が手に入るんだろ? シルビアちゃんに人殺しをさせたくないのなら、お前が代わりにやってやれよ。」 「僕が………ですか?」 「別にオレが引き受けても良いんだが、28のオッサンと14の娘が形ばかりとは言え結婚ってのもな。 それに……………な、《疾風》の弟子をやってくんなら今後のためにも慣れといて損は無いと思うぞ?」 何に、とは言わない。 だが人殺しの罪意識の打棄に、という事だろう。
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