第零義 僕の物語

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対して昏き者は食糧と苗床を逃さないよう統率の取れた動きで包囲網を変形させ、 一匹がレオンハルトの行く道を塞ぐように前へ躍り出る。 「《千盾》!!!!」 数の多さを利用して、前後左右あらゆる方向から包み込むように触手がレオンハルトへと伸びる。 その内の一本、右手から迫る最も接近していた触手をロアはマグナムで正確に狙撃。 撃ち抜かれた触手は体液を撒き散らしながら跳ね、そこへ禍々しい黒い刃を掠らせる。 刃は形を崩して触手から昏き者の体内へ侵入し、大小関わらず血管という血管を破壊。 昏き者は全身から血を垂れ流して倒れ、2人はその横を走り抜ける。 「───────ッ、こちらは駄目ですレオンさん!!!! もう手が回っています!!!!」 用意周到な事に、包囲網は二段構えであった。 突破したと安堵したのも束の間、直ぐに更に密度が高く層も厚い第二陣が目に飛び込んで来た。 自分達の身体能力に所持する武器や地形等諸々の条件を分析し、 持ち前の判断力で即座に不可能と判断したロアは前を行くレオンハルトに別ルートを提案する。 が、黙って着いて来いとばかりにレオンハルトは直進。 自殺行為だが、そうするだけの理由或いは作戦があるのだと信用しロアはそれに付き従う。 「────────解。」 あと数秒で交錯するという所で、レオンハルトは何かを取り払うように指を払った。 その直後、前方にいた昏き者の集団が立つ地面が凹み。 声を上げる暇も無く、一気に闇の中へと落ちて行った。 「これは…………………………」 「この辺は元々地下に巣食う魔獣ケノアラシの住み処らしくてな、空洞が多いんだよ。 それを利用させてもらった。」 穴を覗き込むと、落ちた昏き者が地上へ戻ろうと触手を壁に這わせる等気持ち悪く蠢いていた。 それを嫌そうな顔で眺め、レオンハルトは穴の中へ火を投げ込んだ。 すると炎が足元から瞬間的に燃え広がり、穴の中の昏き者を火炙りに処した。 蛸か烏賊を焦がしたような臭いが立ち込め、2人はその場を離れた。 「……………………何とか撒いたか。」 周囲に昏き者がいないのを確認したレオンハルトは、カモフラージュの茂みで穴を隠し大型動物が掘ったのであろう巣穴に戻った。 「…………………水、飲むか?」 レオンハルトの問い掛けに、グッタリと壁にもたれ掛かったロアは頷く。
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