第零義 僕の物語

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「戦争ムード、ですか? 今こそ帝国を討つべき時と逸る同盟諸国連合に徹底抗戦をするとか、そんな感じですかね?」 「いや、帝国の戦力を結集させて同盟諸国連合を滅ぼし大陸を統一するんだってさ。 今時そんなの流行らないんだけどな………帝国は何時の時代も帝国なんだよな。」 「戦力を結集させて、ですか? 確か帝国が大戦時代に主流としてた海路って、何人もの賢者様が命と引き換えに封じたんですよね? そうなると使えるのは陸路ですが、陸路を使う場合はメルフィス王国を通る事になりますし。 流石にあんな事があった直ぐ後で通れる訳ないですよね?」 「まーな。 本当はもう王国の守護神と呼ばれた英雄はいないから今攻め込まれたら一堪りも無いが、 流石に向こう何十年かは伝説が守ってくれるだろうさ。 だから、帝国は海路を使う方向性にしたらしい。」 「海路は封じられていたはずでは?」 「ところがどっこい、必要に迫られて何と海流を昔のものに戻す方法が見付かったそうな。 あれを作った本人達でなけりゃ解けない複雑難解な仕掛けを、どうやってこの短期間で解いたのやら。」 謎ですねー、不思議ですねー、と。 レオンさんはわざとらしく言うが、その真相は分かっているのだろう。 そしてそれは、レオンさんを真面目にさせてしまう芳しくない事なのだろう。 こういう態度を取る時は大体そうだ。 「攻め入るための海路が復活して、世界はまた大戦時代に戻ろうとしている。 それを防ぐために国同士の連携を強化するのが今回の集まりの大きな2つの目的の1つ。」 「もう1つは?」 「差し迫る魔王軍の脅威に対して、聖女と勇者が手を取り合って人々を安心させるのがもう1つの目的だな。 勇者と聖女2人の演説と、3日間に分けて開催されるパレードが全世界に放映されるんだとさ。」 「それで、何でレオンさんがそのパレードに参加しないんですか? リリーさん達の功績って、レオンさんの働きによる所が大きいって聞きましたけど。」 そう尋ねるとレオンさんはあーと唸りながら首を捻り、 「今ここに、ミカンが幾つか入った箱があるとする。 このミカンは一つを除いて最高級の品種で、玉のような輝きを放っているんだ。」 「はぁ。」 「でもその紛れ込んだ一つは、ただ同然の安い品種の上に明らかに腐ってるんだ。 そんな物が一つでも紛れ込んでいるのが見えたら、他の最高級の物まで汚いと思うだろ?」
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