第零義 僕の物語

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あの結果。 神獣序列60位 《砂漠主ミルワール》の想外の乱入のため作戦は軌道修正すら出来ないまでに破綻し、 作戦の続行は不可能と判断し素材採取班と《千盾》は敗走。 しかし、この神獣2柱をレオンハルトが荷運び役として作戦に参加していた司仙子龍の力を借りて神滅。 自分の方が上であると他人からの評価を塗り替えるのが目的であったのに、 皮肉にも結果的に《疾風》の方が遥かに格上であると決定付けてしまった残酷な結末。 ロア………いや、生物的に体力や筋力の劣る女性というハンデを背負い差別を受けながらも、 男性が大部分を占める世界で男性以上の結果を挙げ続ける事で自分を保っていた《千盾》の精神的な支柱を折った決定的な事件。 今回引き受けた新種の海洋性魔獣──昏き者の調査でらしくない不覚を取った一番の要因でもある。 「それに……………ですよ。 あの魔獣の苗床になるくらいならば………と自害しようとした瞬間、想像してしまったんです。 貴方が助けに来てくれると。 か弱い女である私を救いに来てくれると。 ……………………本当に自分勝手で、卑怯ですよね。 私は貴方を踏み台に不当に高い評価を得ようとしたのに、 いざ自分が危なくなったら女の特権を使って助けてもらおうとしたのですから。」 女として………人間として最低です、と。 胸の内に溜まっていたものを吐き出したロアは、自己嫌悪に満ちた言葉で独白を締め括った。 途中から聞き役に徹していたレオンハルトは遠慮も躊躇いも気不味さも無く、ロアの横に腰を下ろし尋ねた。 「で、アンタはどうするんだ?」 「………………………どう、とは?」 「オレよりも劣っていると、結局自分は男に助けて貰わないと生きていけない無力な雌だと結論付けたアンタはこれからどうするんだ? ハンターなんて危険な仕事は辞めて、柔らかいベッドの上で自分の女を切り売りするのか? …………………ま、アンタみたいな美人ならそこそこ良い男捕まえて悠々自適ライフを送れるだろうからそんな事する必要無いだろうけど。 アンタは"女"なんだから、そういう幸せの形を求めても良いんじゃねぇの?」 「私は………どうすれば、良いのでしょうか…………………………」 「知るか。 オレが尻を蹴り上げて優しく導いてやるのは右も左も分かってないガキだけだ。 良い歳した大人の面倒なんて見切れねぇよ。」
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