第零義 僕の物語

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「誰って…………賢者と英雄を集めた人類最高戦力ですらまるで歯が立たなかったのです。 人間の仕業では無いでしょう。 魔王軍内で何らかのトラブルが発生し、同士討ちを起こしたというのが同盟諸国連合の見解のようですが…………………」 「そりゃな、誰だって信じられないだろうさ。 神獣8柱とその眷属数千を、普通の人間がたった一人で全部片付けたなんてな。」 「それが、星屑幸人さん……………ですか?」 「馬鹿な人だよ、ホント。 見ず知らずの女の子を救うために命張ってさ、最後は《枯渇龍リュブリエ》と刺し違えて逝っちまった。 本当に馬鹿な人だ…………あぁ、もう救いようの無い馬鹿だ。」 「死体等は…………確認したのですか?」 「残念ながら《枯渇龍リュブリエ》が死に際に吐いた腐敗の息吹で、 そこら一帯が黒くドロドロに腐り果ててて何も区別が付かなかった。 辛うじて無機物のペンダントが残ってただけ。」 「だったら………………………」 「だから諦め切れない。 実は奇跡的に助かってて、今も何処かで冒険をしてるんじゃないかって。 その期待を捨てられない…………捨てたくない。」 信じていたいからまだ夢で在り続けるんだ、と。 レオンハルトはその言葉で締め括り、2人の間の会話は途絶した。 再び巣穴内は雨の音だけとなる。 「作戦決行は今日の深夜2時。 手順を確認しておけ、現場で一から十まで指示してやれる程余裕は無いからな。」 読んで頭に叩き込んでおけ、と。 作戦内容と予想されるトラブルとその対処法が事細やかに記された紙を僕に渡し、 ギブソンさんは作戦決行までの間仮眠を取るためソファーに寝転んだ。 そして、聞こえて来る規則正しい寝息。 何時でも何処でも直ぐに眠りに着き体を休められるのが、優秀なハンターには必須のスキルらしい。 「これ、全部覚えるのか………………………」 こっち方面は本職じゃないから苦手だと言っていたけど、実際ギブソンさんの手際はかなりのものだった。 この街インスマスに来てから僅か数日でクラーク本拠地の大体の戦力と内部構造を突き止め、作戦を立案。 僕がやった事と言えば、ちょっと情報収集に協力した程度だ。 「サガさん、あの………………………」 「シルビアちゃん、君も寝た方が良い。 今寝ておかないと後で辛いからね。」
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