第零義 僕の物語

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「まぁ…………ミカンは腐った物と一緒に置いておくと他の物も腐ると言いますし。 そうでなくとも、見栄えが悪いのは確かですね。」 「輝かしいオーラを放つ勇者一行の中に、泥臭い芋みたいなオレが混じってたら何だアレってなるだろ?」 「つまり……………………………」 「お前は見た目が汚くて人様の前に出て良い奴じゃないなら来るなってさ。」 神の王様や神話の兵器や異相世界に存在する悪魔、 他にもそれ単体で英雄伝が一本書ける数々の化け物を打ち倒し世界を何度も救った知られざる救世主。 つい最近………ほんの一週間前には、死の境を行き来するまで傷付いて帝国軍10万を退けた人。 その活躍の一欠片でも世間に知られてくれれば、きっと比類無き大英雄として栄誉名誉を惜しまれず注がれる人なのに。 「イケメンでは無い事って、そんなに罪なんですか……………………?」 世知辛い世の中だ。 両目から込み上げてくる熱さを止める事が出来ない。 「いつの時代も、求められるのはイケメンと美女さ。」 達観したレオンさんは不当な評価にも全く気にしていない様子だが、 その境地に至るまで一体どれ程の苦悩や絶望があったのだろうか。 考えるだけで悲しくなって来る。 「僕もそうなるのかなぁ……………………」 「何がだ?」 「こっちの事なので気にしないで下さい。」 この人の弟子になった時点で既に僕の運命は決まっているのかもしれない。 運命は抗うべきものと昔から色々な所で言われているが、抗ってどうにかなる問題とは思えない。 押し寄せる不幸を押し退けるので精一杯だ。 「………………………レオンさん。」 「肌が痒くなって来たから、何でも無いって言ってくれるとありがたいんだが。」 呪われた体質で早くもレオンさんは察知したようだ。 不幸の襲来を。 レオンさんと出会ってからまだ半年も経っていないが、この人のパターンはもう慣れた。 中には神業的な誰にも予想すら出来ない方向から来るものもあったが、今回は何の捻りも無い直球ストレートだ。 分かってる。 分かってるんだ。 あれは地雷だって。 踏み込めばまた始まるのだ。 僕の………僕達の不幸が。 だが、踏み込まずにはいられなかった。 立ち入り禁止の看板が立てられている所には、人は不思議と吸い寄せられ危険と知っていても入ってしまうように。
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