第零義 僕の物語

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「………………オレに生き別れの兄とか、実は親父が他の女にも忌むべき種を残していたなんてオチは無いからな。」 「その喋り方はスターダストだな………あぁ、紛れもなくスターダストだ。 悪かったな、お前を人外なんて言って。 本当にすまん、気が動転してたみたいだ。」 ギブソンさんは大剣を背中に戻し一応臨戦態勢を解くも、警戒心は抱いたまま部屋に足を踏み入れる。 「これは……………………………」 両足を椅子の脚に縛り付けられ、後ろ手に拘束された男性。 椅子の下には拷問器具で引き抜かれたと思われる爪や歯が散らばり、 片方の目は焼かれて潰され片耳は削がれ顔の皮膚が一部剥がされていた。 当然死んでいる。 恐らく痛みによるショック死だろう。 ここまで拷問されても吐かなかった………とは思えない。 涙や鼻水涎で濡れた襟、半ばから折れた歯、縄で擦られ剥けた皮膚。 多分これをやった奴は、欲しい情報を吐かせた後も拷問し続けたのだ。 ただの遊び……暇潰しで。 「ちょっ、シルビアちゃん駄目だって!!」 この惨殺死体を見せまいとギブソンさんと僕で背中に隠していたが、 シルビアちゃんは僕を押し退けて横から覗こうとする。 それを止めさせようとしたが、止め切れなかった。 「………お父さん…です……………………………」 「駄目だって言ったじゃないか!! 何も君が見る必要なんて───────」 「大丈夫です、サガさん。 お父さんと言っても、一言も喋った事が無くてほぼ他人ですから………………………」 何が大丈夫だ。 今にも吐きそうな顔をしてるくせに。 顔から下へ、更に酷いことになっている体の方へ視線を移そうとした辺りでレオンさんがシルビアちゃんの前に入り視界を遮った。 「こいつがクラークの親玉と分かっただけで十分だ。 これ以上見ても気持ち悪くなるだけだ、止めとけ。」 シルビアちゃんに忠告し、ふとした拍子にも目に入る事の無いようにシーツを死体に被せた。 ここら辺の配慮は流石だね。 でも、 「あの、レオンさん……………………これは?」 「オレも必要なら拷問する。 だが、こんな風に遊び殺す趣味はねぇよ。 こいつはオレが来る大分前から殺されてた。 その証拠に血も乾いてるし、体も冷たい。」 確かに。 死体に触れてみると、かつては温かい血が通っていたとは思えない冷たさだ。
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