第零義 僕の物語

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まさか。 まさか─────────ッ!!!! 「シル────────」 「違うぞ、サガ。 事の絡繰りは恐らく、今お前が至った考えとは違う。 だから疑うな。 他の誰が疑ったとしても、お前だけは最後まで馬鹿みたいに信じてやれ。」 背後にいるシルビアちゃんへ振り向こうとした瞬間、レオンさんに肩を掴まれ小声でそう言われた。 確かに、確かに僕も信じたい。 だけど、それ以外に方法は……………………… 「反魂法。」 「はん………………何ですか?」 「反魂法だ。 死んだ肉体に命を吹き込み死者を生き返らせる邪法…………死霊術とも言うか。 完全な反魂法を使えるのは黄金の一族くらいだが………………不完全な術でも、 死んで日の浅い者なら心臓を動かして生きているって言う体裁は整えられるはずだ。」 「えっと、じゃあ……………………」 「処置を施した生きているだけの死体と婚姻し、昏き者を操ってるんだろ。 ……………………死体と結婚するなんて発想、真っ当な感性の持ち主なら思い付いてもしようとは思わないだろうがな。」 だけど、シルビアちゃんのお父さんを遊び殺した異常性癖の持ち主なら考えられなくは無い。 死姦も喜んでしそうなものだ。 「──────チッ、結界陣が破られた。 急ぐぞ、直に奴らが大挙して押し寄せて来る。」 頭を小突かれたように揺らしたレオンさんは部屋の出口へと走り、僕達もそれを追った。 「ば、化け物…………………………………」 二階建ての建物を優に超える、蛸と烏賊と磯巾着とか海の生物を色々足し合わせたような巨大な化け物。 それが、複数。 街で好き放題暴れ回り、触手で人間を捕まえては口の中へ放り込んでいた。 巨大な個体の動きは鈍くそれだけならば逃げるのもそれ程難しくは無いが、 人間大の個体の動きは俊敏で全力で逃げても簡単に押し倒されてしまう。 地面に倒された哀れな者は生きたまま中途半端に喰われ、 完全に死ぬ前に昏き者の注意は元気な人間に移り放置される。 阿鼻叫喚。 地獄絵図だ。 『───────ィアァァァァァェェェエエェアア!!!!』 気色悪い叫び声を上げながら、一匹の昏き者が飛び掛かって来る。 迎撃のため拳銃を抜こうとするが、速い。 拳銃を掴んだその時点で、昏き者は手を伸ばせば触れられる距離にまで迫っていた。
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