第零義 僕の物語

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それは僕も疑問に感じていた。 迷う素振りも見せずレオンさんが先導して走るので何も言わずに背中を追っていたが、 海洋性の魔獣である昏き者は海から──つまり港から現れる。 事実先頭を走るレオンさんが瞬殺しているものの、港へ近付くに連れて昏き者の数は増えている。 「港にオレの仲間を待たせてある。 街の裏の森を突っ切るよりも、そいつの能力で────────」 レオンさんの回答は、しかし突然降って来た大型の昏き者によって遮られた。 ドゴッ!!!! と、大型の昏き者が落下した衝撃で石畳の破片が飛び散り顔や手足を打つ。 『フォォォォォォオオオオオ!!!!!』 大型の昏き者が雄叫びを上げ、顎辺りに大量に生える触手が僕達へと迫る。 動きは速くない。 図体が大きいだけに、やはり行動は鈍重。 だけど、触手の数は多く長いので範囲が広い。 なので向かって来ると表現するより、覆い被さるように落ちて来ると言った方が近いかもしれない。 「符術【爆雷────────」 「威御雷。」 鞘から抜かれた華美な装飾の脇差しが紫電に光り、それをレオンさんは降って来る触手へ薙ぐ。 すると紫電に光る脇差しから稲妻が拡散し、触手を穿つ。 稲妻に打たれた部分は蒸発するように消滅し、千切れた触手が落ちる。 「ギブソン、殺れ。」 恐らく、全て計算の上で放ったのだろう。 邪魔な触手は全て稲妻に撃ち落とされ、大型の昏き者の急所に繋がる道が開かれた。 「オオッ─────────!!!!」 指示を出されたギブソンさんは大剣を肩に乗せ、数歩の助走で砲弾のように飛び上がる。 そして昏き者の急所である、普段は触手に守られた脆い部分に大剣を叩き込んだ。 『ギェァァァァァァァァァァァァイ!!!!』 急所をゴッソリと抉り取られた大型の昏き者は断末魔を上げながら倒れ込み、 近くにあった建物を巻き込んで崩壊させた。 それでホッと息を吐いたのも束の間、今度は通常サイズの昏き者が曲がり角から姿を見せる。 「走れ、あと少しだ。」 僕が拳銃を抜くよりも速く、投擲されたナイフは昏き者の額に突き刺さっていた。 一体いつ投げたのか。 後ろから見ていたけど、ナイフを投げるような動きなんてしてなかったのに。 「着いた─────って、これは…………………」
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