第零義 僕の物語

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それとも何だ、怪物級の実力者は人間的に残念でなくちゃいけないと世の【理】に定められているのか? 世界最大の軍事国家と鼻唄を歌いながら戦争出来る人は、皆頭がハレハレで愉快なのか? そうではないだろう。 そうでは無いはずだ。 僕にとっても符術の師匠であるキスティ大師匠もレオンさんの友人である《鉄龍》の子龍さんも、 とても常識的で落ち着きのある人間の出来た人だった。 こいつらが馬鹿なだけだ。 「シルビアちゃん、君はこんな無責任な大人には──────ってシルビアちゃん!!!?」 僕が頭を抱えている間に、シルビアちゃんも馬鹿2匹に混じって鯛の活け作りを堪能していた。 しかもシルビアちゃんのような可愛い女の子が酌をするものだから馬鹿2匹の酒は更に進み、 完全に居酒屋の酔っ払い親父のように出来上がってしまってる。 「何やってるのシルビアちゃん!? 君はそっち側の人間じゃないでしょ!!!!」 「え、でも美味しいですよこれ? サガさんも一緒に食べましょうよ。」 「美味しいとかそう言う問題じゃないし!! 僕はね、現状の危うさを説いてるの!!!!」 「本当に危険なら御二方が黙っていないと思いますよ? 全く心配いらないと分かっているからこそ、このように余裕でいられるのでは?」 「そ、それは……………………………」 考えられ……………なくもない。 腐っても、根っこの部分が馬鹿でもこの人達は基本的に超一流だ。 普通の人間より足が速くて力持ちとか、ただ"持っている"だけの人間じゃない。 この人達がお姉さんと昏き者の力量を比較して大丈夫だと判断したのなら、 多分それは素人の僕の恐怖から来る感情に直結したものよりも正しいはずだ。 「ハハハッ!!!! こりゃ一本取られたな、サガ!!!!」 「そうだぞ、サガ。 本当にヤバかったらオレ達がどうにかするって。 だからお前もこっち来て食えって。 海から揚がったばかりの天然鯛の活け作りなんて中々食えるもんじゃねぇぞ?」 僕はそういう態度についても言ってるんだけどなぁ。 でもシルビアちゃんに言い負かされた感があるので、仕方なく僕も────── 『ウゲァァァァァァァァァァァァァァアアア!!!!』 一陣の風が吹き抜ける。 生暖かいものが頬を伝う。 拭ってみると、少量の紅い血が手に付着した。 「やっぱ全然大丈夫じゃないじゃん!!!!!」
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