第零義 僕の物語

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何なのだ。 一体何が違うんだ、僕とこの人達では。 決定的に違う。 壊滅的に違う。 まるで見えている現実が全くの別物であるかのように。 「僕はこんな状況で鯛飯なんて食べないから頭数に入れなくて良いよ!!!! だからさっさとそっちで片付けてこっち手伝えファッキン蟹味噌野郎共!!!!」 ツッコミとは、何と激しく体力を消耗するものか。 世界の条理を捩曲げようとする非常識を一つ指摘する度に、こう……ガリガリと精神力が削られていく感覚に襲われる。 正直もう勝手にしてくれと諦めの気持ちの方が強くなっているが、 僕がツッコミを止めたら場のカオスが後戻りの出来ない所まで増幅して縮小して爆発して宇宙の新たな法則が生まれそうなので怖い。 「サガさん。」 怯える小動物のようであったシルビアちゃんが、何故かここに来て獅子のような強い意思の光を目に宿した。 そして可愛いファイティングポーズを取り、 「私、負けませんからね。」 「さっきから何と闘ってんだよお前らは!!!? 良いよもう、僕は僕の現実で僕が生きるために闘うからお前らは内なる自分とでも闘ってろよ!!!! もうツッコまないからな、絶対ツッコまないからな!!!!」 「お兄さん、誰もが幸せになれる解決策を思い付きました! 鯛飯ではなく、鯛雑炊にすれば良いんです! 鯛のアラだけではなく、他にも牡蠣とか具を入れて量を増やせば全員お腹一杯食べられてハッピーエンドです!」 「天才。」 「将来有望。」 「テメェらの頭がハッピーエンドすれば良いのになぁッ!!!!」 拳銃で海面に見える昏き者を撃って飛び掛かられる前に行動を潰す僕。 背後で豪華海の幸雑炊に大盛り上がりする3人。 この激しい温度差は、エルフの里の海流結界で昏き者が追い返されるまで続いたのであった。 「よ、漸く終わった…………………手、痛。」 エルフの里付近の海域に張られた、海流結界。 外からの異物を強制的に排除する結界により、港からずっと張り付いていた昏き者も剥がされ流された。 昏き者からこの船を守り更にレオンさん達に酷使されたお姉さんに喋るような気力は無く、 銃を撃ちまくった僕も手の皮が剥けて痛い。 一方のレオンさん達は、 「あー、中途半端に食ったから余計腹減って来た。」 「酔いも醒めちまったしな、飲み直そうぜ。」
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