第零義 僕の物語

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それは気持ち悪い。 蛸と烏賊と磯巾着とその他諸々の海の生き物を足して気持ち悪さをトッピングしたような昏き者が、 女の人を犯し孕ませるなんて吐き気を催す。 害虫が可愛く見えるよ。 「昏き者の種族としての特徴は、兎に角女の人の敵なのだと理解しました。 働き蜂に該当する昏き者は多分その認識で良いんでしょうけど、 女王蜂に当たる昏き者の親玉はどんな生物……存在なんですか? 繁殖を他の生物の雌に頼るのを考えると、女王蜂のように種を産み増やす能力は無い。 そう見て良いんですね?」 「いや、昏き者の親玉はその種族唯一の雌と言っても良い存在だ。 親玉から生まれた昏き者も他の種族の雌を使って眷族を増やすが、 代を重ねる程に生殖能力は低下し4代目にもなると性欲すら失せるようだ。 一代目……つまり、最も生殖能力の高い純粋の昏き者を産み出せるのは親玉だけという訳さ。」 「何匹か捕まえて実験したが、他の種族の血が混じった個体程寿命も短い。 性欲すら消える4代目にもなると、生きられるのは2、3週間って所か。」 「蝉以下ですね。 蝉って気温が下がる夏の終わりに出てくれば一ヶ月近く生きられるみたいですし。」 「異なる種族間での交配──交雑って言うんだが、それ自体にかなりの無理があるんだ。 近しい種族でも無い限りな。 代を重ねる程に弱体化するのも当然と言えば当然さ。」 「親玉さえ倒してしまえば、昏き者は放って置いても勝手に滅んでくれるって事ですね。」 「そうなるな。」 「となると、昏き者の親玉を倒すか昏き者を操っている犯人を止めるか……どちらを優先すべきですかね?」 親玉を倒してこれ以上純粋な昏き者が産まれるのを阻止するか、 或いは昏き者を操る犯人を止めて被害が拡大するのを防いでから親玉を叩くか。 下手に枷を無くしてしまうと昏き者が暴走してしまう可能性もあるので、 僕個人としては前者の方が賢明な選択だた思うのだけれど。 さて、レオンさん達はどう判断するのか。 「犯人、ね…………………」 まるで迷宮入り確実の難題を前にしたかのように、レオンさんは頭を掻き椅子に凭れ掛かった。 見るからにやる気が無い。 これは色々と理由を付けて面倒事から逃げようとする時の癖だ。 「なあサガ、お前の言う犯人ってのは誰だと思う?」 「誰って、まさか推理小説のように実は犯人はこの中にいるなんて言わないですよね?」
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