第零義 僕の物語

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ピキュィーンと、同じ空間に座する一同に電流のような閃きが走る。 誰もが表情を固くして視線を逸らし、偶然その場に居合わせた名探偵の演説が始まる直前のような空気が生まれる。 「いやいやいや、そんなノリの良さ必要無いですから!!!!」 この申し合わせたかのような息の合い様。 シルビアちゃんやヴィオレッタさんまで参加しているので、一人ハブられた気分だ。 「………………良く気付いたな、サガ。 シルビアの母親と父親を殺して昏き者を操り今世間を騒がせている犯人。 そう、それはお前──────────」 「あ、そう言うのいらないんで。 さっさと要点だけ言ってもらえますか? そのノリに付き合うのダルいんで。 話も全然進まないし。」 チッと、聞こえよがしに舌打ちを鳴らしたレオンさんは僕の前に今日の日付の新聞を滑らせた。 「これは……………帝国最大手のレオルスクエアですね。」 「その一面だ、読んでみろ。」 「この50年間同盟諸国連合に封じられていた海路が遂に───って、これは……………………」 50年程前………この世界が大戦時代にあった頃。 繰り返される悲しみの連鎖に嘆いた何人もの賢者様が己の命を擲ち、 帝国が各地へ兵力を投入する主流ルートとして用いていた海路を封じた。 海流の大幅な変化によって帝国から出航した船は他国の陸地へ辿り着くのが困難となり、 それで長く続いた大戦も終結に向かったのだ。 だけど2週間前──レオンさんが帝国軍10万を退けメルフィス王国を救った1週間後、 帝国が海流を元に戻す方法を見付けたと。 そのような動きが帝国に見られるとレオンさんに聞いけど、まさかそれがこの一件に繋がっていたとは。 所謂フラグ回収だね。 「犯人は帝国…………ですか?」 「このタイミングでこれだ、実は全くの無関係でしたなんて事は流石に無いだろ。 戦争の悲惨さを嘆いた賢者様は、海底や海岸の地形を変える事によって海流を変化させ帝国が海路を使えないようにした。 だが、昏き者なら変えられた地形を元に戻す事も難しくは無いはずだ。」 「地形を変えるって、かなり大規模で時間を要する作業だと思いますけど…………………」 「昏き者には数十mクラスの個体がゴロゴロいるんだよ。 そう言う奴らの大部分は体が重過ぎて地上に上がった瞬間自重で潰れるから見られないだけでな。」
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