第零義 僕の物語

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「は? 嫌だよ面倒クセェ。 報告書を書くんだから、お前が報告に行けば良いだろ。」 「同盟諸国連合御抱えの英雄だから頼んでるんだよ、《竜狩》のギブソン。 お前が報告に行った方が情報の信頼性も重要性も高まるってもんだ。」 「スターダスト、お前だって同盟諸国連合実質トップのカレン・アリアンロードとのコネが有るだろ。」 「オレは基本的に顔を知られてないから、行っても誰だお前って門前払いされるだけだ。 よく第一印象は不審者って言われるしなな、最悪…………いや確実に通報されて捕まる。 それに"あの人"も忙しいし、一々呼び出してらんねぇよ。」 "あの人"? 話の流れ的にカレン・アリアンロード──レオンさんの命の恩人で色々と仕事を押し付けて来る絶世の美女だとは思うが、 いつもは姉さんと呼んでいるのに何で今日は"あの人"と他人行儀なんだろう? それ程気にするような事ではないと思うけど、何故か引っ掛かる。 ………………少し、違和感を感じる。 「勝手で悪いが急ぎの用事も有るんでな、"シルビア"達を連れて報告に行ってくれ。」 「何でシルビア達を連れて行くんだ? 正直オレ一人で行った方が早いし楽…………あぁ、やっぱ一緒に連れてくか。 シルビアは同盟諸国連合に保護してもらった方が良いもんな。」 「?」 何だろう、不自然だ。 自分を納得させるのではなく、まるで僕達に説明しているかのように聞こえる。 「ほらサガ、出立の準備だ。 昼頃には出るからそれまでに必要な物揃えとけ。」 ギブソンさんは僕達に離席を促し、ほぼ無理矢理に退室させられる。 最後に僕が蹴り出されて扉を閉められ、部屋にはレオンさんとギブソンさんだけが残った。 「私達には聞かせられない内緒話でもするんですかね?」 流石にシルビアちゃんもあの強引さには疑問を持ったようだが、 レオンさんは大概秘密主義なので特に気にはならない。 多分この件に関して2人だけで整理しておきたい事でもあるのだろう。 「さーね、僕達は指示された通り出立の準備をすれば良いんじゃないかな。」 「オレに何か個人的な話でも有るのか? 折角美女揃いのエルフの里に来たのに、むさ苦しい男2人だけなんて全く色気の無い部屋にいつまでもいるのは御免なんだが?」 レオンハルトは席に座ったまま、意図の知れないギブソンに普段通りの軽口を叩く。
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