第零義 僕の物語

71/118
前へ
/786ページ
次へ
「個人的……………まぁ、確かにそうだな。 個人的な話と言えば個人的な話だ。 オレが恐らく"個人的"に気になってるだけだしな。」 「………?」 勿体ぶった、何か含みのある言い方。 更にギブソンは椅子には座らず、机を挟んでレオンハルトと向かい合う。 まるで目の前の男が突然行動を起こし反応が遅れたとしても、対処出来る様にと。 「スターダスト、お前はサガの師匠だ。」 「何故に断定系?」 「なら、当然何時何処で出会ったのか覚えてるよな?」 「…………………………………」 疑われている。 しかし、何を…………………と。 頭の足りない阿呆のように首を傾げる事はしない。 何故、何を疑われているのか。 その自覚があるレオンハルトは、椅子に深く腰掛け目を細め話を促した。 最後の最後まで言うか言うまいか迷っていたギブソンもそれが決め手となり、口に出した。 この部屋が紅く染まり兼ねない一言を。 「スターダスト……………………いや違う、お前は誰だ?」 「流されて結局こうなったけど、何で僕まで行く羽目になるんですかね?」 少し落ち着いて考えれば、僕まで同盟諸国連合へ報告に行くのはおかしいと分かる。 昏き者を操るための巫女であるシルビアちゃんは同盟諸国連合に保護してもらうのが一番安全なので、 ギブソンさんと一緒に行くのは不思議でも何でも無いだろう。 しかし、僕は? 僕の最大の役目はシルビアちゃんを安全な場所に逃がす或いは頼れる人に託す事なので、 レオンさんと合流できた時点でそれは既に果たされている。 同盟諸国連合に預けるとも決まったので、ぶっちゃけ僕はお役目御免なのだ。 レオンさんに着いていくか、もしくは聖国にいるリリーさん達の元へ向かっても良かったのだ。 「シルビアの護衛役だ。」 「謙遜抜きにしても、僕なんか糞の役にも立ちませんよ? 僕が出来る事なんて、精々笑顔で近付いて撃つか逃げるフリをして後ろから撃つかくらいですね。」 「それはそれで怖ぇよ。 お前はスターダストに何を教わってんだ。」 「相手に気取られずに仕込み銃を撃つ技術とかですね。」 「暗殺者でも育成してるのかあいつは……………………」 それを否定出来ないのが辛い所である。 「良いではないかサガ、そもそもシルビアを最初に助けたのは君だと聞いてるぞ?」
/786ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30236人が本棚に入れています
本棚に追加