第零義 僕の物語

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そして重力に引かれて落ちる寸前の爆弾に次々とナイフを投擲。 回収と並行してやっているにも関わらず狙いは非常に正確で、1本も外さず爆弾全体に満遍なく刺した。 「これで、ラスト!!!」 最後の一本。 一番最後に回収されたナイフは爆弾本体ではなく、本当に極僅かに残された火を運ぶ導火線を切り落とした。 「よっ、と。」 針鼠のように串刺しにされた爆弾を危なげもなくキャッチし、最後に投げたナイフを回収して一礼。 次の芸に移るため使い終わった小道具は後ろへ片付けると思いきや、 爆弾を掲げて注目を集めポンッと自分の口で爆発の音を言う。 すると針鼠のようになった爆弾はピンク色の煙を吐き出して爆発し、 代わりに一枚の紙がお兄さんの手にヒラヒラと舞い降りて来た。 その紙を掴み取ったお兄さんは、少ないながらもいた観客を掻き分け真っ直ぐ僕の所にやって来た。 「はい、どーぞ。」 これは次の芸に必要な協力の要請なのだろうか? それならば、芸を見せてもらう観客としてわざわざ拒否する理由も無い。 なので、素直にその紙を受け取った。 受け取ったならば、普通見る。 何も書いてなかったとしても、上から下までざっと目を通す。 「これは……………………………?」 それは人探しの依頼書のような物だった。 中心に見覚えのある顔写真が大きく印刷されていて、その下に探し人の名前と顔写真だけでは分からない特徴が書かれている。 「シルビア・ラヴクラフト……………………シルビアちゃん?」 顔写真と名前、記載された特徴。 まさか同姓同名の別人という事は無いだろう。 世界には3人自分と似ている人がいるとは言うが、流石に歳も名前も特徴も完全に一致する程偶然は重ならない。 「この娘、知りませんか?」 先手を取られた。 僕の武器や符術は中距離でこそ真価を発揮する………と言えば多少なりとも格好は付くが、 有り体に言ってしまえば近距離と遠距離の攻撃手段が無い。 特に近接格闘なんかに持ち込まれたら僕に勝ち目は無い。 頭で考えるよりも、体の方が先に動いた。 何度も何度も、反射的に行えるまで反復した動き。 体を後ろへ引くと同時に腰のホルダーから銃を引き抜き、左手で右肘を固定し真正面に向かって引き金を引く。 凡そ、0.35秒。 0.35秒で音速の弾が放たれる。
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