第零義 僕の物語

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「ヴィオレッタさんも早く!!!!」 「そうしたいのは山々なのだがな、そうもいかないようだ。」 何でと喉まで出かけた所で、集落の方から複数の人影がこちらへ向かって来るのが見えた。 速い。 多分、駿馬を全力で走らせるよりも。 人の形を保ったままそんな事が可能なのは。 「英雄─────それもあんなに沢山!!!?」 「行け、君達が逃げ切るだけの時間くらいは稼いでみせるさ。 心配する必要は無いぞ、これでも私は里一番の戦士なのだからな。」 「ッ──────御武運を、縁があればまた何処かで。」 「ああ、また何時の日か。 更に遂げた君の姿を見られるのを期待しているぞ。」 一緒に来て下さいと、我が儘をぶち撒けてしまいたい。 僕だけでは無理だと、弱音と本音を吐いて責任やら何やらをぶん投げてしまいたい。 だが、駄目だ。 これが確実な方法なのだ。 僕にもシルビアちゃんを逃がす程度の事は出来ると認めてくれたから、ギブソンさんは守ってやれと言ったのだ。 その期待を裏切ってはいけない。 ここで根性を見せなければ、僕はこれから先も誰かに頼り切りのクソ野郎だ。 「行くよシルビアちゃん、掴まって!!!!」 一目、一瞬だけギブソンさんの方を確認する。 流石のギブソンさんも、No.持ち2人相手には劣勢だった。 しかしそれは数的不利と僕達2人を追わせてはならないという条件が課せられ全力が出せないからであり、 その条件さえ無くなれば対等以上に闘えるはずだ。 僕達を逃がすために闘ってくれてるギブソンさんのためにも、早く逃げなければ。 「サガさん、私達だけ逃げても良いんですか!!!?」 「僕達の最優先事項は、君を同盟諸国連合に送り届ける事だからね。 逃げて良いんじゃなくて、逃げなきゃいけないんだよ。」 「でも!!!!」 「僕やシルビアちゃんがいた所で何も変わらないし何も出来ないし、寧ろ足を引っ張るだけだよ。 あと黙ってて、舌噛むよ。」 追手は直ぐにやって来た。 騎馬数十騎。 防御力よりも機動力を優先するためか、重たい鎧は纏わず軽装。 今はまだ先に出たアドバンテージがあるが、あちらは軍用の馬。 僕達が乗っている馬よりも体格が大きく、恐らく体力も多く速度も上。 単なる鬼ごっこでは必ず追い付かれてしまう。
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