第零義 僕の物語

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馬子にも衣装という言葉もある通り、やはり人の印象は服で大きく変わるものだ。 「ん、これか? 正直このようなヒラヒラとした服は私の好みでは無いのだがな、 せめて屋敷の中では女らしい格好をしろと父上が煩いのだ。 それともサガ君は騎士装束の方がお好みかな?」 「いえ、お似合いだと思いますよ。 寧ろ僕としては騎士なんて血生臭い職業はさっさと引退して、 結婚するか舞台女優にでもなれば良いと思うんですけどね? あのギブソンさんを一方的に伸してしまうような人とまた戦場で出会すのは勘弁ですから。 僕に関わりが無い所で英雄の能力を持ち腐れちゃって下さいよ。」 「ギブソン…………あぁ、君達を助けようとした2人組の男の方だな名前から察するに。 彼は手強かったな、やはり名のある英雄なのか?」 「は?」 惚けているのか、それとも本当に知らないのか。 普通に考えれば前者だろう。 お姉さんは一目で僕を"サガ・ニーベルヘルン"と断定した。 それはつまり、僕達の調べが付いていたという事だ。 だから僕を知っていて、ギブソンさんを知らないなんて事は有り得ない…………と思うのだが、 どうもお姉さんは本当に知らない様子だ。 「《竜狩》……………と言えば分かりますか?」 「ほう、彼が《竜狩》だったか。 成る程納得のしぶとさだ、砂と水の入った重しを殴っているような感じだったよ。」 「………………本当に、知らなかったんですか? 僕の事は知ってたのに?」 するとお姉さんはカップで口元を隠しながらも、馬鹿にするように笑った。 「君は………意外に無知なのだな。」 流石にムッとしたが、ここで言い返す程自分が賢い人間だとは思っていない。 無知なのは事実だ。 「すまない、気を悪くしたのなら謝ろう。 だが君も彼の弟子ならば、自分の正確な認知度を知るべきだ。」 「認知度?」 一体何の冗談だ。 認知度で言えば、僕なんかよりギブソンさんの方が遥かに上だ。 僕が言うまでギブソンさんが《竜狩》だと知らなかった人に正確な認知度を知れと言われても、 それはこっちの台詞だと聖なるバリア的なミラーのフォースで自分に跳ね返るだけだぞ? 「サガ・ニーベルヘルン。 君は多分、各業界で最も注目が高まっている人物だろう………………良い意味でも悪い意味でもね。」 「僕が?」
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