第零義 僕の物語

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ハハハと自分で言って笑うが、アルシェさんは至って真面目な雰囲気だった。 重苦しいと言い換えても良い。 「……………………サガ君、英雄100人とはどれ程の戦力か分かるか?」 「8万の大軍を20分と経たない内に片付ける程度には強大な戦力だと思いますが?」 「世界最大の軍事国家である我が帝国でも、軍に属する英雄は五十本槍の50人と予備の十数人程度だ。 それも五十本槍の中にも派閥が存在するため、皇帝陛下の召集命令でも無ければ一堂に集まる事は無い。」 「巨大な国家には付き物ですねぇ。」 「英雄100人とはね、サガ君。 冗談抜きに帝国を滅ぼせてしまう程の戦力なのだよ。 世界を二分する巨大勢力の片方である帝国をね。 これは最早同盟諸国連合と帝国に並ぶ第3の勢力だ。 《疾風》──レオンハルト・スターダストという人間を中心に集まった勢力………スターダストグループとでも呼ぼうか? このスターダストグループを君が受け継ぐかもしれない。 ここまで言えば、君の潜在的な脅威を理解してくれるかな?」 「ちょ、ちょっと待って下さい!! 何ですかスターダストグループって!? 確かにレオンさんを救うために100人の英雄が駆け付けてくれたのは事実ですけど、 あんなのもう二度と無いたった一度きりのボーナスゲームみたいなものですよ!! それにレオンさんは、人を集めて勢力を築いたり団体を結成するような意識の高い人じゃないですから。 友達が片手の指以下の一匹狼気取りのぼっちですから!!」 「本人にその意思があるかどうかなんて関係無い。 彼はやってしまったのだ。 100人の英雄を一度従えてしまったのだ。 スターダストグループ"実現の可能性"を自ら証明してしまったのだ。 故に国の国防を預かる私達は、その可能性を視野に入れて行動しなければならない。」 行動しなければならない。 その言葉は非常に重く、頭をぶん殴られた気がした。 英雄100人を集めた、世界に喧嘩を売れる巨大勢力スターダストグループが誕生するかもしれない。 そしてレオンさんの弟子である僕は将来的にレオンさんに匹敵する実力を得、 更にそのスターダストグループも引き継ぐかもしれない。 かもしれないばかりの憶測だが、国防を任されたお姉さんはその"かもしれない"を潰さなければならない。 ならば、その行動とは。
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