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「出来そこないは、この家にいらないの」
綺麗に磨かれた爪は赤く、まるで魔女。アイメイクは何時間かけたのか濃く厚く、威圧感で押し潰されそうになる。
魔女に苛められているのは、高校生のお下げ姿の女の子だった。今時にしては珍しく、ワンピース型のセーラー服を改造せず、膝より下まで丈がある。一見、少しダサい姿のその少女は、眼鏡の奥の瞳を揺らしていた。
「聞こえなかった? 貴方なんて要らないの。聖マリア女学院の大学へ進学できないですって? ああ、恥ずかしい」
呆然としていた少女は、テーブルの上にひっくり返されたカバンの中身を集めながら、唇を噛みしめる。
今日、学校から来たのは、彼女の3者面談についての御知らせだ。
彼女が通う、聖マリア女学院は幼稚園から大学までエスカレーター式で進めるお嬢様学校。選び抜かれた淑女に育つとされ、幼稚園でのお受験は失敗した彼女は、小学校からそこに入学していた。
3者面談で学力について話し合いたいと来れば、魔女でさえ理由が分かってしまう。
「ウチの家には、皇汰(こうた)さえいればいいの。優秀な血を引くあの子が居れば」
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