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「どうしたの?」
みかども窓を覗いて固まった。
熊の大きなぬいぐるみが、涎かけをしているが、それはどうみても涎かけではない。
紫色の総レースの、紐のパンツ。女性物のセクシーな下着だった。
「きゃああ! だ、駄目よ、だめ! 皇汰にはまだこんなの早い! 見たら駄目っ」
「違うよ、中に人が居ないか覗いてるだけだってば」
「嘘っ」
微動だにしない皇汰は、押しても引っ張ってもびくともしない。
諦めたみかどは、先陣切って中へ飛び込んだ。
「す、すいません、あの熊のぬいぐるみ止めて下さい!」
ドアベルを鳴らしながら息巻くと、カウンターの中に一人の男の人がグラスを磨いていた。
「いらっしゃいませ。もうすぐ珈琲ができますよー」
のんびりと優しい声で言うその男の人に、みかどは目を奪われた。
色素の薄い茶色の髪は、サラサラと流れるように艶やか。
優しく笑うその眼元も、焦げ茶色の瞳も、骨張っていない長い指も。
息を飲むような、綺麗という言葉が似合う男の人だった。
ただ頭に熊の耳をつけているのが全てを台無しにしている。
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