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どうか不吉な予感が的中しません様に。結城は祈るような思いでカメヤまで車を走らせようとしたが、思わぬ邪魔が入り、結城の進路を阻まれた。警察官による封鎖だった。少し先にカメヤの看板が見えている。
結城は更なる不吉な予感を抱きながら車を降り、人だかりの中に身を投じた。しかし、全く前に進むこともできず、お世辞にも背が高いとは言えない結城では、事の成り行きを見ることは叶わない。
「何かあったんですか?」
心配そうに警察の動きを見つめているすぐ隣の中年女性に尋ねてみた。
「あら、あんた亀谷さんところ出入りしてる兄ちゃんじゃないの」
「ああ、はぁどうも。おはようございます」
「おはようございますじゃないわよ。亀谷さん、今朝殺されてるのを発見されたらしいのよ。しかも奥さんも一緒に。あんた何か知らない?」
「へっ?まさか、そんな・・・」
ある程度予想はできていたものの、改めて他人の口から聞かされると、しかも殺人だと言われてしまうと驚かずにいられるはずがない。つい口調が強くなる。
「いつ?いつ亡くなったんですか?」
「それがわかんないみたいっすよ。両隣の古本屋と駄菓子屋が、亀谷さん家の様子が変だ、って警察に通報したらしくって。で、警察が中に入っていったら、二人が刃物で数カ所刺されてたって・・・」
中年女性の前に立っている前掛けをした、確か酒屋で働いている若いアルバイトの男が後ろを振り向いて、少し顔を歪ませながら結城の質問に答えた。彼は近くの大学に通う学生だと、亀谷から聞いたことがあった。
「昨日は昼前に亀谷さんのところに来たんですけど、店が開いてなくて、しかもご自宅の方も留守みたいでしたけど・・・。もしかしたら、昨日のこの時間は既に亡くなっていたってことですか?」
「そうかもしれないっすねえ」
「強盗ですか?」
「いやあ、それはわかんないっすよ。警察じゃないとねえ」
「そうですか・・・。一昨日は何も変わったことなかったのになあ。まさかこんなことになるなんて」
「あんた、念のために、警察にその辺のところ話しておいた方が良いんじゃない?後から、なぜすぐに言わなかったんだ、って言って変な疑いをかけられるかもしれないわよ」
「そうっすよ。先に話してしまう方が楽っすよ」
「はぁ・・・」
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