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今朝から庭を掃いてはいるが、あっという間に枯葉が散らかっている。溜息混じりに庭に目をやっていると、ひょいと寺の小僧が顔を出した。
「こんにちは。寺内様。和尚様からこれを預かってまいりました。そろそろ時期ですものね」
ここからそう遠くないところにある寺から来た小僧は、庭に目をやると、はらはらと落ちる枯葉に苦笑いした。
持ってきてくれたのは、小さめではあるが「芋」だった。毎年この時期、枯葉を集めて子供達と焼き芋をするのだ。狭い庭ではあるが焚き火が出来ない事もない。恐らく和尚の頃もやっていたのだろう。
朝から集めた枯葉に昼が過ぎてから火をつけ、頃合を見て芋を入れた。子供達が帰る頃には、焼けているはずだ。
帰り支度をする子等の手に焼けた芋を乗せてやった。子供の手には丁度よい大きさの芋だ。さすが和尚だ。
そこへふみが息を切らしながら、小走りにやってきた。
「遅くなりました。よろしくお願いします。今日は本を読むのですよね?」
そこへ、芋を齧っていた清太がふみに駆け寄る。
「おふみ姉ちゃん!おいも食べようよ!」
「え?おいも?」
微笑ましくなって、ふみの目の前に芋を差し出すとおずおずと手を出したが、取り落とした。
「すみません!」
高めの声を発して、慌てて拾おうとするが、熱いのか上手く拾えない。私が拾って渡そうとした手には昨日より赤く感じる掌があった。
差し出すのをやめて、芋を割ってふうっと冷まして渡してやった。
「ありがとうございます。あ!先生、昨日の膏薬お返ししようと思って」
空いてる手で袖に手をやると、貝殻の膏薬を出した。
「それは――あげるよ。私は治ったから、もう使わない。おふみさんのほうが使うでしょう」
そうすると彼女は手を握って隠すように引っ込めた。
「姉ちゃん。食べようよ!」
清太とふみが縁側に座って、何か言葉を交わしながら芋を齧るのを見て、顔を緩ませ火の番をしていた。
「あの……ご馳走様でした。本を……」
二人は食べ終わったのか、私の傍らに並んで立って私を見下ろしていた。
「そうだな。始めようか」
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