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3. 位置
1995年12月、冬期休暇初日にその年2度目のインドへ向かう彼女をT君が東京駅から成田空港まで車で送ってくれ、飛行機の出発時間まで一緒に過ごしてくれたが、彼女は別段その意味を考えもしなかった。
帰国時もT君は成田空港へ迎えに来ると言ってくれてはいたが、本気にしていなかった彼女は4時間もの飛行機の遅れを彼に伝えることもなく帰国、到着ロビーを出てT君の姿を見つけた時にはとにかくとても驚いた。
成田空港から彼の車で東京駅近くまで来ると、T君がおもむろに『君の中で僕の位置は?』と彼女に問いかけてきた。返事に困った彼女、とっさに『インド!インドは私の中ではとても大切な場所。そのインドとT君は同列に居るのよ』と答えたが、彼には当然理解できなかったらしい。
同じ道に戻り、デジャヴのように同じ場所で同じ質問を繰り返したT君。彼女もまた同じ答えを繰り返し、二人の間に進展は無いままその日はお互い帰途についた。
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