16 . 逢崎 要

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藍色を帯びた夕陽が教室を包み込む。 腐敗した教室の床を見つめたまま、僕は動けないでいた。 鶫の言葉が何度も脳内で再生され、その度に頭痛は激しさを増す。 『お父さんも、同じような言い訳をしたんだと思うよ』 動悸が高まっていくのがわかった。 僕のお母さんと郁さんのお母さんと一緒にいたお父さん。 郁さんが言っていた。三人は高校生の時から一緒なのだと。 秕と楓と一緒にいる僕。 秕とは恋人で、楓とは友達だ。 「違う……違う、違う」 僕はあんな奴とは違う。 自分の欲を満たし、飽きては相手を変えるような、あんなクズとは________ 『君は都合よく彼女達を利用しているだけだ』 頭から離れない。 どれだけ否定しても、彼の言葉に全て埋もれていく。 『君みたいな奴は、都合が悪くなると自分だけの世界に閉じ籠る』 耳を塞いでも止まらない。 僕は秕を利用している。独り怖いから秕といる。死ぬ気なんてこれっぽっちもなくて、可哀想な僕に同情してほしくて。楓と仲良くしてるのも、独りにならないためで。 彼女達が僕を必要としているんじゃない。 僕が彼女達を必要としている。 そこにあるのは理解ではなく、ただの理想。 「ああ、………」 記憶の中のみんなが黒く染まっていく。 逃げるように記憶を遡る。けれど、どこにも僕の理想はなかった。 まるで僕の見てきたもの全部、偽物みたいだ。 遡っていくと、黒く潰れたお母さんがいた。 『早く死んでよ』 言葉なんて使えば使う程軽くなっていくのに。 その言葉だけは重さを失わず、いつまでもずっしりと僕の中で残り続けた。 全部全部、嫌なこと全部。思い出す。 お父さんがいなくなって、お母さんが泣いて。 いない相手の分の食事をして用意する。 そこに僕の分はない。 お母さんが縋っていたものは、形をなくしてもお母さんの中で残り続けた。 僕が何をしてもお母さんは振り向いてくれなかった。 だから___________ ………………………………
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