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「あー、それは今もかな」
「そうなの?」
私の返しに楓ちゃんは軽く驚く。
「うん。私が知ってるだけでも三回。本人は滅多に泣かない、なんて言ってるけどね」
その時のことを思い出して、ふと笑ってしまった。
強がっている要はちょっと可愛いかった。
「そう、ならよかった」
楓ちゃんが安堵の微笑みをこぼす。
「なんだか、私と別れてから変わってしまった気がしていて……不安だったの。この前会ったときも、ずっと強がっているように見えたから。泣いてるなら、ちょっと安心」
二人の関係は。
楓ちゃんと要の関係は、たぶん普通の彼氏彼女とは違うんだろうな、と思った。
彼女の口ぶりからそう思わされた。
不思議だけど、愛おしい関係。
「私たちはね、お互いが泣ける場所を探してたの」
「泣ける場所?」
「うん。じゃあまずは」
楓ちゃんが目を細める。
「私の話から」
見えていなかったものが、少しずつ開けていく。
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