01 . 熊沢 愛莉

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「逢崎だが、家庭の事情で暫く学校に来れなくなった」 休み明けのホームルームで、担任の隅田が気まずそうに伝えた。 クラス中が騒めきだしたのを「静かに、静かに」と制しながらさらに表情を曇らせる。 「あんまり詮索とかするなよ。それから、逢崎が戻ってきてからもいつも通り接してやってくれ。それじゃ、出席者取るぞ」 いつも通り接するもなにも、あいつは普段からボッチだ。戻ってきても誰もなにも話さないし、関わらない。 要するになにも変わらない。 一週間前までならば。 頬杖をつきながら逢崎の机へ視線をやる。 金曜日に散々な罵倒の言葉を書き殴った机はもうない。 多少ガタついているものの、表面はまだ綺麗な机。 今朝、秕が珍しく早く登校して私にこう言った。 「いろいろ言いたいことはあるけど、とりあえずカナメの机を変えた方がいいよ。 じゃなきゃ面倒なことになっちゃうから」 秕はそれだけ言ってどこかへ行ってしまった。
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