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もらった線香に、マッチで火をつける。
余らせたらもったいないから、束のまま火をつけて香炉に押し込む。
形だけ両手を合わせる。
彼が死んだと聞いた時は驚いた。
おまけに左目を自分で潰したらしい。
死ぬことを選択した彼には、きちんと称賛を送らないといけない。
てっきり、秕の死体を見ることを言い訳に逃出すと思っていたから。
ごめんね。
君のことを見誤っていたよ。
それでも、秕に相応しいとは思わないし、君に対してくだらないと言ったことも訂正はしないけれど。
ただ楽しませてもらった。
数年前に目を焼いた秕の変化も、生きたくないだけの君の変化も。
僕の暇潰しにはちょうどよかった。
暇潰しなんて言ったら怒る人もいるかもしれないけれど、他人からしたそんなものだ。
人は生きている人よりも死んだ人に関心を寄せる。
届かないものほど、手を伸ばす。
届かない部分を、想像で楽しむんだ。
僕と出会わなかったら、君たちはどんな結末を迎えたのかな。
もしかしたら今よりは、少しだけ優しい終わり方だったかもしれない。
楽しませてくれてありがとう。
同情はしないよ。
僕は君に関心しているんだ。
君はちゃんと死ぬことができた。
生きたくない人生をやめることができた。
息苦しい人生から抜け出した。
苦しい思いをしてまで。
逢崎要、君は頑張ったよ。
だから君に送る言葉はひとつだけ。
「おめでとう」
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