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とある高校の屋上…。春の風が桜の花びらと戯れていた。
そこには少年が1人、碁盤状のコンクリートに座り、本を読んでいた。
彼の他には誰も居らず、頁を捲る音が耳を澄ませば聞こえてきそうだ。
神木終夜。この学校の2年生であり、趣味は見た通り読書である。
部活にも入らずにこんな放課後までいる物好きは他には居ないだろう。
晴れた日はいつも下校の時刻に流れる放送を聞くまでここに居る。
『校内に残っている生徒は速やかに帰宅して下さい。繰り返します―』と今日もこの放送を聞き、本に栞を挟むと鞄の中に仕舞うと立ち上がった。
冬の時期よりは暗くなるのが遅くはなったものの辺りは橙色と紺色を混ぜ合わせていた。
屋上から校内に入る扉は経年劣化か『ギィー』と音を立てて開き、怒るように『バン』と閉まった。
校内は物凄く静寂だった…彼の呼吸音と足音だけが聞こえてくる。
こんな時間に校舎内にいるのは教師ぐらいであろう。
文化部は早めに帰る部が多く、運動部は体育館や運動場などに分散されている。
1階まで降り切ると下駄箱を目指して自動販売機が並んでいるピロティーを横切ろうとした。
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