人間界

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白衣を着た男性が、泣き叫ぶ赤ん坊をあやしながら検査室から出てくる。 21世紀後半になってようやく政府も少子高齢化対策として、移民を受け入れるようになった。 しかし国民の大多数が単一民族で構成されているこの国では、言語も文化も違う移民の受け入れに消極的で、22世紀後半の現在でも移民を受け入れ始める21世紀前半より、少子化の数値が少し良くなった程度である。 また移民の増加は、元々この国に住んでいた多数派の民族で構成される裕福層と、移民で構成される貧困層に国民を2分することになった。 しかしこれらの問題はあと数世紀すれば解消されるはずである。 なぜなら貧困層を構成する移民は、1組の夫婦が一生に授かる子供の数が少なくとも3人以上に対し。 裕福層を構成する民族は老人の平均年齢は上がったが、1組の夫婦が一生に授かる子供の数は多くても2人だからである。 裕福層を顧客とする病院では、その少なくなる子供の専属病院に指定して貰おうと、いろいろなサービスを行っていた。 この病院では、生まれてきた子供がどういう才能を持って生まれたかを鑑定するサービスを行っている。 白衣の男性は泣き叫ぶ赤ん坊を母親に渡したあと、赤ん坊の親族全員に向かって話しを始めた。 「お待たせいたしました。 お子様は羨ましくなる程の才能の宝庫です。 こちらが、判明した全ての才能が書かれた鑑定結果の報告書です」
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