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「……ええ、まあ。でも、いま言うより直接見たほうがわかると思うわ」
ん?
なんだかいつもの希らしくないというか、歯切れが悪い言いようだ。
彼女の表情を見るに釈然としないといった感じだ。
「叶さんも見たんでしょ? どんな感じだった?」
希にわずかに遅れて叶さんが私の席のところに来たので彼女にも聞いてみる。
「う~ん……、なんていうのかな……ボクも希と一緒ですごく疑問が湧いたって言ったらいいのかな……」
叶さんも希と同様に歯切れの悪い感想のようだ。
これは希の言った通り、百聞は一見に如かずだろうからもう置いておいていいだろう。
私はそう判断し、彼女らに他愛無い世間話をふった。
──キーンコーンカーンコーン……
朝のチャイムが鳴ると、皆はそれまでの雑談をやめて教室の前方のドアに視線を注ぐ。
ガラガラガラガラ……──
昔ながらのスライドドアの音を響かせながらドアは開かれ、教室に担任と見知らぬ見た事のある制服を身にまとった女生徒が入ってきた。
「起立、礼!」
「おはようございます」
「はい、おはよう」
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