一章 廻り合わせのゴラル

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 私が一通り自身の個人的見解を含めた転校生についてを話していたら、やっしーが転校生の名前を言った辺りで『待った』をかけてきた。 「その転校生の名前が『望月比奈実』ってところ」 「そうだけど……それが──?」  『どうかした?』と私が言い切るより先に、何が思い当たることがあるのか、やっしーが食べていた弁当を除けてケータイを取出し、なにやら操作しだした。  私はその様子に何事かと、やっしーの操作中のケータイをのぞき見る。 「ほら、これを見て」  そう言って、やっしーが見せてきたケータイの画面には此処──清美市(きよみし)──でまことしやかに囁かれている都市伝説を扱っている掲示板のとある記事が表示されていた。  ──ツァル・マクシェファ──  記事のタイトル名はそう記載されていた。  記事の内容は──深夜に街を徘徊していると、何処からともなく魔法少女アニメのキャラのようなコスプレをした女が般若の形相で奇声を発しながら、器物を目に見えない力で破壊していく──という、実に荒唐無稽な代物だ。  しかし、やっしーは私のような“人の褌で相撲を取る”にわか仕込みの魔法使いではなく、正真正銘の歴とした魔法使いで、しかも、いわゆる秘密結社的な魔法使いの組織にも属しているのだ。  さらには天魚が私に幾つか施した仕掛けを看破し、そのうちの一つを改ざんする手助けをしてくれたのだ。
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