一章 廻り合わせのゴラル

9/25
前へ
/144ページ
次へ
「望月比奈実はコスプレ通り魔であると?」 「ただの通り魔だったなら、お巡りさんに通報するだけでいいんだけどね……」  やっしーは苦虫を噛み潰したような表情で苦々しくケータイの画面に映る情報を睨む。 「いっきーは『思念魔法』を知ってるかい?」  “思念魔法”か──それなら、 「一応、知ってる」  確か……、思念魔法は魔法を初めて発動させる際に込めた思いや感情で魔法で起こせる事象の得意不得意が大まかに定まり、以降に魔法を行使する時に必ずその思いや感情を込める必要があり、且つ込めた思いや感情の度合いに依って魔法の効果までもが変化するだったかな。  それに思念魔法は“仮初めの魔法”なのだと、天魚は言っていた。  まあ、私が知っているのはこの程度だ。 「なら、話を進めるよ。これは『協会』が調べ上げたことなんだけど、“望月比奈実は憎悪を根源とする思念魔法を使用する”って報告が上がっている」 「“憎悪”って、穏やかじゃないね」 「そう、まさにその通り。憎悪がこもった魔力は災いをもたらす。  そんな物騒な人物が、いっきーのクラスに不可解な転校をしてきたんだ。  望月比奈実にはおそらくだけど何かしらの思惑がある。それが何なのかは計りかねるけど、これは注意を払っておいた方がいいよ」  やっしーはそう話を締括ると、除けていた弁当を戻し昼食を再開した。
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加