一章 廻り合わせのゴラル

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 今日一日の学業が終わり、私は掃除当番でもないのでそそくさと教室から退散する。  すでに廊下には他クラスから出てきた生徒達で賑わい、あちらこちらで雑談に花が咲き辺りに雑音が溢れかえっていた。  私は昇降口のある方向とは逆方向に数歩を歩いたところで一旦停止し、回れ右をして昇降口の方向へと歩きだす。  ──まったく、染み付いた習慣とはなかなか抜けないものだ。  三年の部活動は秋の終わりの頃にスポーツ推薦や特技推薦の見込みがある生徒を除き終了となる。  なので今はもう部活動はないのだが、たまに無意識に部室に行こうとしてしまうことがある。  少し前までは当たり前だったことが、今現在ではそうではない。  私はしばし過ぎし日々に思いを馳せ、しばらくしてから気を取り直して歩を進めた。  昇降口で上履きからローファーに履き替え、校舎の出入口に向かう。  放課後ゆえに大方の生徒達がこの場を頻繁に行き来しているため、昇降口のドアは開けっ放しにされており、時折外から吹き込んでくる冷たい風が肌が露になっている頬を撫でる。  ひんやりする風の冷たさに身震いをしつつ、私はさっさと帰ろうと校舎を出ようとしたとき、ふと視線を感じる。 「……なんだ?」
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